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2023.11.13
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カテゴリ:池田可軒さん
 「慶応2年(1866)宥免されて幕府軍艦奉行の役職についた可軒は、僅か半年で病のため職を止め、全くの隠棲生活に入った。(略)
幕府が倒れ明治維新となって可軒は嗣子であり当主である福次郎(のちの長春)の名をもって本貫地帰住を願出て許され、京都に暫く滞在し、六女蓮子(のちの長春の妻)出生後、岡山市に引上げた。初めは采地井原市に帰住する考であったらしく、井原村に心学館という教学所を設立し、それによる地方教化啓蒙を企画したが、可軒の人物識見学才に惚れ込んだ宗家備前藩主や藩士学者たちの奨引もあって、岡山城下荒神町の典医柴岡宗伯の屋敷が空いていたのでそこに落着いた」(鶴遺老』より

 池田可軒(長發)は生まれも育ちも江戸っ子であったが、知行地であった井原に帰住すべく明治元年(1868年)3月2日に江戸を出立、まずは京都に向かう。4月15日に可軒さんが参朝の上、当主福次郎(長春)に代わって本領安堵の朱印を受ける。9月21日に大坂より乗船、24日ついに岡山到着。岡山市中へ住居を移した可軒さんであるが、先祖代々の知行地・井原を訪問すること、井原陣屋内の教諭所を立て直して心学舘を開き、自らが講師となることを望むようになったという。
 明治2年(1869年)1月、可軒さんの井原巡検の日取が2月初旬と定まるも、翌月には巡検が3月15日に延期され、更に4月1日、5月20日と延期が続く。一方で2月には心学舘諸役(規則取調掛、取締兼出納調方、見廻り役、世話役、下世話役、掲牌草稿の彫刻と書籍板刻)を任命している。
 同年7月、井原知行地の事務は倉敷県が行うと決定したことで可軒さんの井原巡検は許可され、実権を持たない “殿様” として7月21日に井原を訪れて、当分陣屋へ居住することを村へ達した。可軒さんが村に命じたことの一つに神社建立があり、江戸屋敷に祀っていた尾砂子社と井原の尾砂子社の合祀、江戸屋敷にあった弁天社と八幡社の建立、大石内蔵助を祀る大石社の勧請などが次々と進められたという。井原で暮らしたいとの希望を村役人に告げつつも、可軒さんは岡山へ帰ったとのこと。
 明治3年(1870年)7月に井原知行地は倉敷県へ統合され、心学舘開校計画は立ち消えになってしまったのだった。残念。

 心學舘掲牌三則

 汝等領民須早入此舘識文字以明孝悌以勤稼穡世業、
 學之根本須以朱子白鹿洞掲示及孝經大學爲主而廣渉百子不妨、
 詩書勤乃有不勤腹空虚是韓文公之詩也入此舘者須以勤爲最第一事、

  右三則是今玆已巳二月所定也後更俟改張應置教頭以斟酌增損俟、

心 學 舘 長  池 田 長 發 記     
 
 可軒さんは幕府直轄の学問所・昌平黌で抜群に優秀だったうえ、“人間は萬巻の書を讀まねばならない” と常に他人に読書を勧めているだけに、その実行者でもあった。池田家文庫に所在する可軒さんの蔵書目録や渡欧中に購入した書籍目録、可軒さんの自著及び稿本に関する記述等を見ても、読書研学を専らとして修養に努めていたことが十分に窺い知れる。
 明治6年(1873年)に木畑坦斎さんに宛てた書簡では、同年3月に文部省が刊行した「小学読本」等の拝借を要請していることから、教育には関心を持ち続けていたのかも。井原の子供達も可軒さんから江戸仕込みの学問をたくさん学びたかっただろうなぁ。

 陣屋があった場所に現在は井原小学校が建っていて、正面玄関の東側にある庭園「冬園」には、昭和61年(1986年)に可軒さんの生誕150年を記念して陣屋跡を示す石碑と池田筑後守長發の銅像が並んで設置されたそうな。学校施設のため観光での訪問はご遠慮ください――とのこと。

 ノート 参考文献
・岸 加四郎『鶴遺老:池田筑後守長発伝』(井原市教育委員会)昭和44年
・小林久麿雄『幕末外交使節池田筑後守』(恒心社)昭和9年
・日本書誌学会 [編]『書誌学』11-13(日本書誌学会)昭和43年
  岡田裕子『池田可軒の舊藏書(1-3)』 
・井原市史編集委員会 [編]『井原の歴史』創刊号(井原市教育委員会)平成13年
  多屋さやか、太田健一『池田長発の未発表書簡について』
・井原市史編集委員会 [編]『井原市史 Ⅳ』(井原市)平成13年
・太田健一 [監修]『図説井原・笠岡・浅口の歴史』(郷土出版社)平成21年
・井原観光協会HP「池田筑後守長発の像





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Last updated  2023.11.13 03:56:43
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