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「YASHIROCKさん!管理のスタッフが病欠してしまったからちょっとヘルプしてもらえないですか?」 僕は日曜や祝日はショールームで接客をする仕事があるので、平日に休みを取っている。完全に夜型タイプの僕は休日はガッチリ午後まで睡眠をとる。当然その日も午後まで眠っていて、安田取締役の電話で目が覚めた。 「30分で行きます!」 まぁどんな会社でもよくある事だ。お客様に迷惑が掛かってしまうことの方がよっぽど怖い。限りなく寝巻に近い私服でバイクにまたがる。 現在は新しいバイクをバイク屋の後輩に探してもらっている最中なので、代車の原付バイクに乗っている。SUZUKIのよくわからない真っ白のやつで、今時こんな原付はアクティブな奥さんか16歳のヤンキーしか乗らない。この原付に乗っている姿は出来るだけ人に見られたくない。 「急がなくては!」 団塊世代並みの自己犠牲心でヤンキーのような原チャリを飛ばし会社に向かう。ipodの選曲も早いやつにしてみる。ほんとにあせっていたので、いつもは2段階右折をする恵比寿の交差点を無意識の内のそのまま右折してしまった。右折して50mほど進むとパトカーのサイレンの音が近づいてきている事に気づいた。 「うわ~俺だ~」 まぁどんなバイク乗りでもよくある事だ。遅れてしまって会社に迷惑がかかる事の方が怖い。だから素直に止まり、とっとと取締りを受ける事にした。安田取締役に呼び出されて警察に取り締まられる。こんなアンラッキーな日はダジャレすら冴えないものだ。 「だめだよ!キミ!あそこ2段階右折だよ~。免許見せなさい!」 「すいません。急いでいたものでつい・・・」 「キミ歳はいくつ」 「はっ、はい。32です」 「え~!みえねーな!」 当たり前だ!ただでさえ童顔の僕が真っ白な原付で、寝巻みたいな格好で道路交通法違反をしているのだから。まともな30代の行動ではない。正直みっともない。ここは素直におまわりさんの言う事をきいて、切符切られて早く会社に行こう。そう思っていると・・・ 「あれ?キミこの免許、更新期限が過ぎてるよ。キミ無免許運転だよ」 ええ~!!!さすがにこれは気づいていなかった。まさか免許取り消しか?動揺が隠せない。あせっていると、やさしいおまわりさんが、「これはうっかり失効だからちゃんと再交付して警察に出頭すれば免許がなくなる事はない」と教えてくれたのでひと安心。だがそれもつかの間だった。 「とりあえずパトカーで署まで来てもらって取り調べするから。このバイクはおまわりさんが署まで乗っていくから!」 「ええ~!!!パトカーで連行!!!ま~じ~で~!!!」 無線で呼び出したようでパトカーがさらに2台ほど集まってきた。いつの間にか5人程の警察官に囲まれている。多分逃亡を防ぐ為だと思うけど、やけに僕とおまわりさんの距離が近い。僕がすこし動くとおまわりさんも少し動くのだ。 「お前危ない物とか持ってね~よな?ごめんな一応決まりだから!」 と言ってボディーチェックまでしてきた。これだから色白は嫌だ!偏見だよ!おまわりさん!僕は大げさに両手をあげホールドアップの格好をしてみせた。だんだん自分が犯罪者に思えてきた。まぁうっかり失効と2段階右折だとしても犯罪に変わりはないのだが、道行く人は僕をそんな目では見ていなかった。 パトカーに乗り込むYASHIROCKS。頭のなかのステレオでは中島みゆきの「世情」が流れていた。金八先生パート2の「卒業式前の暴力」のワンシーンが思い浮かぶ。 渋谷署までのパトカーの中で、僕は新屋二中の加藤よりも切ない顔でドアウィンドウの外を眺めていた。信号待ちで目が合った、20歳そこそこのB-BOYは0.5秒ほどで目をそらした。ああそうだ。今の僕はだれもが目をそらすド悪だ。 あ~情けない。すべては自分のだらしなさが招いた事。本当に反省している。こういうだらしなさ仕事にも出て来てしまう。 いいきっかけだった。いろんな事をリセットして立派な大人になろうと思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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