カテゴリ:仕事
「恥死」とは恥ずかしさのあまり過呼吸状態になり脳が破裂する恐ろしい死に様だ。「急性恥脳爆発症」ともいうらしい。 恥かしすぎて忘れたがあれは2年ほどぐらいだったような・・・。ある平日にMOOR代表のYAMATO氏が僕に言った 「YASHROCK!香港から友達の女の子が日本に来ているんだけど、クラブに行きたいといっているから、今夜連れて行ってあげてくれないか。あとIT社長(日本人)のAさんも一緒にくるらしいから頼む。」 おおー。それはいい。僕は人を招待したり、もてなしたりするのは好きだので喜んで承諾した。僕は別に東京を代表するような都会的な人間ではない。でも右も左も日本を知らない香港の「今風のお嬢さん」に「東京っぽい東京」をすこしだけ教えてあげる事ぐらいはできる。 「彼女達はIT社長のAさんと先に六本木で食事しているらしいからYASHIROCKはあとで合流してくれ。Aさんの電話番号はわかるでしょ?」とYAMATO氏に言われた通りAさんに電話をした。Aさんとは僕もすこし面識があった。 「YASHIROCKSです。Aさん今夜は『ageha』あたりに行こうと思ってるんですけどどうですか?」 「ああ~YASHIROCKSさん。いや~僕の方で『ベルファーレのVIPルーム』予約しちゃったんですよ~。なんですか?そのアゲハって?なんかあるんですか?」 ちょっ!ちょっ!ちょっ!ちょっ!ちょっ!ちょっ!ちょっ!ちょっ! 香港ガールが行きたかったのは『クラブ』でしょ?『ディスコ』にいくの?こんな時間にアフターアワーズはやってないでしょ?疑問に思いつつ、NOと言えない日本人の僕はとりあえずタクシーに乗ってベルファーレに向かう。 連れて行くつもりが連れられてしまったのだが、まぁいいや。ベルファーレのVIPルームなんてのも話のネタになるかもね。そんな軽い気持ちで行ったのが不幸の始まりだった。 黒服にエスコートされてド派手な演出のエレベーターを使いVIPルームへ。べつにこれくらいでは驚きもしない。 VIPルームには香港ガールが2人とAさんとAさんの彼女と真面目そうなB社員の5人。会社帰りらしく男性陣はスーツを着てた。 「しっ、しまった」 ここで異変に気付く。フロアでかかっているのは「非の打ち所のないユーロビート」そして踊り狂っているのはスーツ姿の40前後のおっさんと、どっか田舎のほうから来たであろうインテリな大学生と中途半端なギャル。みんなでパラパラを踊っている。 僕はダボっとしたパンツにタンクトップ姿で頭はソフトモヒカン。いつも通りの「ダメ人間スタイル」に身を包んでいる。そう、僕は浮いているのだ。紛れもなく浮いている。僕が犬だとしても「種」が違う事に気付くほど浮いている存在なのだ。 パラパラをみんなで踊っている空間に自分がいるなんて初めてだ!これはキツイ!パラパラは正直なところ、体が拒否反応を示すのだ。いやいや。パラパラを馬鹿にしているのでは、僕は苦手というだけだ。 周りから見た僕は社長に呼びだされた最も下っ端の小僧にしか見えない。危ない危ない!VIPルームでよかった!ここならあの猛獣たちの巣くうパラパラ地獄に堕ちることもあるまい。まさに高みの見物だ。ここはひとつ、軽く飲みに付き合ってテキトーに帰ろう! パラパラ空間との違和感を覚えた僕は全く酔えず、そして無口になる。ああ~早く帰りたい。そんな事を考えていると、A社長が恐ろしい発言をする 「みんなでフロアで踊りましょうよ!」 えええ~!!ま~じ~で~!! シャチョウ!あそこは地獄ですよ! 僕は地獄行きなのですか? あなたのは閻魔様なのですか? 目の前が真白になった。パラパラを踊る自分の姿が脳裏によぎる。危ない。そして恥ずかしい。 VIPルームからフロアに降りる為の階段は、まさに三途の川だ。 フロアに出ると僕以外の皆は「天国」に来たかのように盛り上がっている。何故だ?ココは地獄のはずだぞ! 想像してごらん。 もしあなたが、スーツ姿でB-BOY達100人に囲まれ、踊れないHIP HOPを踊らなくてならない時を・・・ もしあなたが、スーツ姿でセックスピストルズのライブ会場に迷い込んでしまった時を・・・・・ 僕にとってはそういう事だ。人間には得手と不得手というものや、それぞれの価値観というものがある。 世の中にはカラオケで沢田研二の「ストリッパー」を歌いながら全裸になる事を恥とせず、ベルファーレでパラパラを踊る事を恥とする人間だっているんだぞ! 恐怖にガタガタ震えながら、フロアの隅で小さくなっていると、真面目そうなB社員が僕に話しかけてきた。 「なんか皆で同じ動きするみたいですね!YASHIROCKSさんこのダンス知ってますか?」 な、な、なに~!知るわけね~だろ!ていうかアンタはパラパラすら知らね~のか? 聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥というが、知らないということでかかない恥もあるのだ。 すると今度はA社長が僕のほうにやってきて 「ほらほら、YASHIROCKSさん。もっと真ん中にほうに行ってくださいよ」 と背中をグイッと押してくる。偉い社長さんなんで、抵抗することができないM男な僕。流されるままに微妙に空いたフロアの中央へ押し出される僕。 そのときアンルイスの『あぁ無情』がかかりフロアの盛り上がりはピークに達する。 そしてフロアのスポットライトがモヒカンタンクトップの僕を照らす・・・・ ヘビににらまれたカエルのように、何も出来ずに立ち尽くす。 サングラスはずしたら噴出しちゃうほどあどけないのは僕のことか? だっ、だめだ~。もうここまでだ~。誰か~、救急しゃ・・・・・ 「YASHIROCK 30歳 恥ずかしさのあまり死に至る」 まぁ、その場になじめなかった僕が悪いだけの話だ。僕以外は僕の事なんて気にしちゃいなかったし、誰か知り合いに会う事もなかった。自分の姿にノリツッコミしていただけだ。 「なんだコリャ!つまんね~から帰る!」 と、ちゃぶ台をひっくりかえさずに、社長にお付き合いしたあの日の僕は、モヒカンタンクトップの立派な大人だった。 ※注ベルファーレでもいい感じのイベントや海外のスターDJがプレイすることぐらいは知っている。これは僕のブログなので僕なりに大げさに書いてみただけです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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