「かさこじぞう」
「かさこじぞう」というお話があります。年末に年越しの金もない老夫婦のおじいさんが、年越しの金をつくるために、笠をうりに外へ出かけていきます。しかし、一つも売れずあきらめて家へ帰る途中、数体のお地蔵さまが雪に降られて寒そうにしているのを見て気の毒に思い、持っている笠を全部かぶせて、手ぶらで家に帰ります。家に帰り、おばあさんにその話をして、謝ろうとしますが、おばあさんは、それは良いことをしましたね、と言って、一緒に喜んでくれます。その夜、二人が寝ていると、お地蔵さまが、お礼に、お正月用の品々を持ってきて、戸口に置いて帰ります。それを、見つけた二人は、それを二人だけのものにしようとせず、近所の人々にも分けてあげます。この話を聞いて思ったのは、こんなおじいさんのしたようなことを、やさしく聞いてほめてくれるような、きだての良い奥さんは、実際にはいないだろうなあ、ということです。反対に、なんて馬鹿なことをしたんだ、このくそ爺、甲斐性なしと言って責められるのが普通かもしれません。