31日の日記
ハーバード経済日誌 (その3)「新学期」ハーバードの教授法(その1) ハーバード、エールなど米国東部の伝統ある名門私立大学八校を、ツタのからんだ古い伝統ある校舎の意から「アイビーカッレジ」、そのスポーツ連盟を「アイビーリーグ」という。ただ一口にアイビーカレッジといっても、その校風や教授法は全く異なるというのがもっぱらの評判だ。私はハーバードの校風しか分からないが、次のようなたとえ話がある。プリンストンでは、教授たちは君たち学生にどこにスイミングプールがあり、どうやって泳ぐかを教えてくれる。エールでは、君たちをプールに突き落とし、君たちが泳ぐのを監視するだろう。ではハーバードではどうか。教授たちは君たちが泳ごうが沈もうが全く気にしないのさ。 ちょっと極端な話のような気がするが、それでも少なくともハーバードの校風はよくたとえられている。当然のことだが、勉強するしないはすべて自分の責任である。クラスの討論に参加するしないも個々人の自発性に委ねられる。ただコースによっては、討論に参加するクラスパーティシペーションがそのまま成績になるような授業もあるから、うかうかしていられない。しかも討論に参加するには大量なリーディングの宿題をこなさなくてはならない。 もっとも最近は自由放任の校風も少し変わってきたのかもしれない。又聞きなので確証のある話ではないが、一昔前、ハーバードビジネススクールであまりにも厳しい勉強と学生間の競争で自殺者が出たため、果たして学生を死に追い詰めるようなシステムを教育といえるのかという議論が起き、もっと学生の面倒を見るようにした、という話だ。つまり、沈みそうな人は助けよう、ということだろう。 私の在籍したケネディー行政大学院も心のケアーを含めた学生のためのサービスは充実していた。たとえば、単位を落として落第しそうな学生がいると分かると、カウンセラーが担当の教授にその学生が何をすれば単位を落とさずにすむか、ある程度、掛け合ってくれるそうだ。年に何人かはそのお世話になるらしい。幸いにも私はカウンセラーのお世話にならずにすんだが、リーディングの宿題やペーパーの作成に埋もれ、おぼれかかったことが一度ならずあったことは事実だ。