不思議な世界番外4
目をつぶると見える世界1目を開けていると見えないが、目を閉じると見える世界がある。別にナゾナゾ遊びをしているわけではない。私には、目をつぶると必ず見えるものがある。目を閉じれば真っ暗になるだけだと言う人もいるかもしれないが、注意深く見れば無数の粒子のようなものが見えるはずだ。子供のころ、大人にそのことを言っても、信じてもらえなかった。小学校の理科の先生にたずねても、目のゴミだろうと言われるのが関の山だった。友だちに聞くと、見える人と見えない人がいるという。なぜ、このようにはっきりしたものが見えないのか。私は首をかしげるばかりだった。見たことがない人のために、どのような粒子なのか説明すると、直径1ミリもないような無数の丸い粒子が目をつぶった「視界」一杯に広がっている。粒子と粒子の間は等間隔、私の感覚では一センチ四方に20個以上あるから、数百個、いや数千個以上あるかもしれない。その粒子群はただ、その場に留まっているだけではない。すべての粒子は、海の中の小魚の大群のように、一斉に右に動いたり、左に動いたり、斜め上方に動いたり、下方に動いたり、たえず一糸みだれることなく流れるように動いている。面白いのは、スピードが変わることだ。スピードが速くなると赤くなり、スピードが落ちると青くなる。少なくとも、そのように見える。クスコで見た夢の中でも、走り回るインカ人は赤く、座っているインカ人が青かったことから、スピードと色には関連がありそうだ。調べてみると、ドップラー効果により、光を発している物体が私たちの方へ近づいていれば光のスペクトルは青い方へずれ、遠ざかっていれば赤い方へずれるという現象(光のドップラー偏移)が起こるという。粒子が赤くなるということは、私から遠ざかっていることを意味しているのか。逆に粒子が青いときは、近づいているのだろうか。ところが、よく観察してみると、必ずしもそうでないことがわかる。純粋に早く動くと赤く、遅くなると青になるようだ。このメカニズムについてはよくわからない。さらに面白いのは、この粒子群が存在するのは、立体的な世界、つまり三次元世界ではなく、平面の世界(二次元世界)に存在するということだ。粒子群は私から遠ざかることはない。私の「視界」の平面上を行ったり来たりするだけ。このため私は、これらの粒子が目の表層の細胞と関係あるのかとも推測した。あるいは網膜の表面を流れる液体状の粒子であるかもしれないと考えた。ただ、そのように考えても、まだ説明しきれない部分が多くあることもわかってきた。どういうことかと言うと、その粒子群は目の動きと関係なく、動くということだ。何か規則性があるわけでもなさそうで、右に行ったり左に行ったりする。不思議なことに、右に動けと念じると、すぐ右に動き出し、左に動けと念じると急に左に動き出すこともある。なにか意識と連動する粒子である可能性もある。結局、現在に至るまで、この現象を明確に説明した人を知らない。これを見る人がどれだけいるのか、いないのか、それすらわかっていない。(続く)