カストロが愛した女スパイ11
(前回までのあらすじ)ドイツ生まれの19歳のマリタ・ロレンツ。1959年2月、父親が船長を務める豪華客船で革命直後のキューバを訪れた。そこでフィデル・カストロと出会い、恋に落ちる。やがてロレンツは妊娠。当時、キューバで賭博場を仕切っていたCIA工作員フランク・スタージスにスパイとしてスカウトされ、数奇な人生を歩むことになる。1978年5月、そのスタージスのせいで、米下院ケネディ暗殺特別委員会の証人として、証言することになった。▼宣誓 議長が口を開いた。 「我々のきょうの証人は、マリタ・ロレンツ女史である。証人は立って、宣誓をするよう求める。あなたは、あなたがこの小委員会に提供する証言・証拠が真実であり、真実そのものであり、真実以外の何ものでもないことを神に誓って、正式に誓いますか?」 ロレンツは立ち上がって右手を挙げ、左手を聖書に置き「誓います」ときっぱりと言った。 「ありがとう。ではまず、証人の弁護士は記録のために自分自身について述べなさい」と、議長はロレンツの弁護士に向かって言った。 「議長。私の名前はローレンス・クリーガーです。私はロレンツ女史の弁護士です。私の事務所は、ニューヨーク州ニューヨーク市パーク街二三〇にあります。私はニューヨーク州法曹界とワシントンのコロンビア特別区法曹界のメンバーです」 「ありがとう。クリーガーさん。ところで、委員会の規則が書かれたコピーが既に証人に手渡されたと思いますが」 「その通りです。議長」 「ありがとう。ここで議長として、この委員会の調査目的について簡単に述べておきたい。これはいつも、それぞれの証人に対して述べることである。 この委員会に与えられた権限は、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺と暗殺にまつわる状況について、最大限かつ完全な調査、検討を実施することである。委員会の調査には、大統領を守るということに関する現行の米合衆国の法律、司法権、それにCIAなど省庁の能力が、条款や法律の執行面で適切であるかどうかを決めることも含まれる。また、合衆国政府の省庁や機関が証拠や情報をすべて公開したかどうか、政府機関が関知していない情報や証拠の中に、暗殺の調査に役立つものがあるのかどうか、もしあれば、なぜ、政府機関にそうした情報がもたらされなかったのか、なども調査対象になっている。そして、この特別委員会がもし、現行の法律の改正や新しい法律の制定が必要であると判断した場合、そのことを下院議会に推薦することも我々の仕事である。 議長はトリプレット氏の証人に対する質問を認める」 議長の承認を得たトリプレットは早速、質問に入った。 「ロレンツさん。生年月日を教えていただけますか?」(続く)