カストロが愛した女スパイ68~70
(お知らせ)ブログの更新をしばらくお休みさせていただきます。理由は(1)メンテナンスのため(2)他の惑星を視察するため(3)ただの秋休み――のうちのいずれかです。お好きなものをお選びください。再開は、この宇宙での時間が相対的なためはっきりしませんが、浦島現象が発生しなければ二週間ぐらいではないかと思われます。ご了承ください。 なお、「カストロが愛した女スパイ」は3回分アップしておきます。長いですが、お暇なときにゆっくりとお読みください。71から再開します。68偶然の傍観者3 「次にオズィーを見たのはいつですか?」 「私はフランクのところに戻りました。私はモーテルに泊まっていましたが、フランクは私と連絡を取り合っていたのです。彼はデービッド(ウォルターズ)に接触し、私に近付かないように言うと約束しました。しかし、その前に彼は旅行の用意をしなければならないと言いました。フランクに同行したその旅行で、再びオズィーに会ったのです」 「それが次にオズィーことリー・ハーヴィー・オズワルドに会ったときですね?」 「はい」 「その旅行というのはいつでしたか?」 「十一月二十二日の一週間ぐらい前です」 「ほかにはだれがその旅に加わったのですか?」 「ジェリー・パトリック・ヘミング、ペドロ・ディアス・ランツ、ノボ、オズィー、フランクもいました。それに私とオーランド」 「ノボとはノボ兄弟のことですね?」 「ノボ兄弟です」 「過去を思い出しているうちに、ノボ兄弟の名前を思い出しましたか?」 「いいえ」 「ニックネームも覚えていませんか?」 「覚えていません。忘れました。その一年前に名前を聞いたと思うんですが、忘れました」 「私の計算ではその旅行には全部で七人(編注:トリプレットの計算違いで実際は八人)いたのですね?」 「はい」 「その旅行はどこからスタートしたのですか?」 「マイアミです。私はベビーシッターに赤ん坊を預けました。私はベビーシッターを雇わなければならなかったのです。だけど私には週末も彼女に払えるほどのお金がなかったので、赤ん坊を彼女の家に連れていってもらったのです。私たちは車にはねられ、けがをしていましたし。彼女は赤ん坊を彼女の家に連れ帰ってくれました。私は彼女にはすぐに戻るとだけ伝えました」 「それではあなた方七人は皆、マイアミに集まったのですね?」 「はい」 「どこか特別の家とか、場所とかで?」 「オーランド・ボッシュの家の前です。私たちは車に乗り込みました」 「一台以上の車があったのですか?」 「二台です」 「どんな車ですか?」 「汚くて、古いやつです。メーカーは覚えていませんが、一台は後ろに翼のような、何て言うのかしら、フェンダーがついていました」 「翼のあるフェンダーだと思いますが。私も分かりません」 「青、緑の、古くて、汚い車です」 「フロリダのプレートナンバーを付けていましたか?」 「それは覚えていません。というのもフランクは車の後ろにいくつかのプレートをいつも置いていましたから。彼は州境のパトロールから逃れるためプレートを換えるのが常でした。銃を運ぶときはいつも、いくつかのプレートのセットを持っていました」(続く)69暗殺旅行1 「どういうルートを取ったのですか?」 「ルート?」 「そう。どの都市を通っていったのですか?」 「タンパ、テキサスです」 「フロリダのフライパンの柄を通っていったのですね?」 「フライパンの柄って? 聞いたこともないわ。いいえ」 「アラバマやミシシッピを通って行った?」 「はい」 「ニューオーリンズも通った?」 「はい」 「途中、どこかで止まりましたか?」 「食事のために止まりました。フレンチフライを食べました。私たちは窓からトレイを出してくれるような場所で食べました」 「ドライブインですね?」 「ドライブイン。そうです」 「途中、どこかで一泊しましたか?」 「いいえ。ずっと運転していました」 「どうやって? 運転を交替しながらですか?」 「はい」 「それぞれの車には、ずっと同じ人間が乗っていたのですか?」 「はい」 「あなたは交替しましたか?」 「私はフランクと話せるよう、彼と同じ車に乗りたかったのです」 「あなたはずっとフランクと同じ車に乗っていたのですか?」 「はい」 「あなたとフランクのほかにだれが乗っていたのですか?」 ロレンツはこのときうわの空で、当時のスタージスがロレンツに対して取った冷たい態度を思い出していた。スタージスはダラスで何か大仕事をやるのでロレンツのことをほとんど構ってくれなかったのだ。ロレンツが答えないでいたため、部屋に沈黙が走り、委員らの視線がロレンツに向けられると初めて、ロレンツは我に返った。 「すみません、もう一度言って下さい」とロレンツは聞いた。 「ほかにだれが、あなたとフランクが乗った車にいたのですか?」 「フランクとノボ兄弟と私が一台の車に乗り、残りはもう一台の車に乗りました。 「それでは三人が一台の車に乗っていたのですか?」 「いいえ、四人です」 「あなたも運転をしたのですか?」 「いいえ、私は疲れていてとても運転できませんでした。夜間運転だったのです。私は道もよく知りませんでした。彼らは大変よく道を知っているようでした」 「その旅はどれだけ時間がかかったのですか?」 「二日です。目的地には夜遅く着いたのを覚えています」 「どこに着いたのですか?」 「ダラスです」 「ダラスではどこかに泊まったのですか?」 「モーテルに泊まりました」 「モーテルの名前は何だったんですか?」 「モーテルの名前は思い出せませんが、モーテルには砂利を敷いた車道が裏手にありました。ダラス郊外のモーテルです」(続く)70暗殺旅行2 「車の話に戻りますが、あなたとフランク、そしてノボ兄弟が一台の車に乗りましたね。ではほかの車にはだれが乗っていたのですか?」 「オーランド・ボッシュ、ジェリー・パトリック・ヘミング、ペドロ・ディアス・ランツ、それにオズィーです。私はオズィーとは一緒に乗りたくありませんでした。私は彼を好きではなかったのです」 「どうして好きではなかったのですか?」 「彼には、そういった態度がありました。彼は、何故私たちのグループと一緒にいるのか話しませんでした。私たちはグループ内で信頼し合っていました。だから私には彼は部外者のように思えたのです」 「あなたは彼と何か話をしたことがありましたか?」 「私は彼に、ライフルを持ち運べるほど強そうにみえない、と言ったことがあります」 「もう一度、何と言ったんですか?」とドッドが質問に割り込んだ。 「私は彼に、ライフルを持ち運べるほど強そうにみえない、と言ったんです。彼は私がそう言ったことで気分を害し、それ以来・・・。それは私が最初に彼に会ったときのことです。彼はそれ以来、私のことを気に入らず、私も彼のことが気に入らなかったのです。彼はそういう態度でした。彼は無愛想でした。ある瞬間、知ったかぶりをしたかと思うと、その次の瞬間には不機嫌になるのです」 トリプレットが再び質問した。「彼はどんなことを言ったのですか?」 「彼は世界中を飛び回ったとか何とか言っていました。私だってそうです。私はドイツ語をしゃべれます。彼もいくつかの外国語が話せると言っていました。とにかく私たちは馬が合わなかったんです」 「何の外国語を彼は話せると言ったのですか?」 「分かりませんが、スペイン語はあまりうまくありませんでした」 「あなたは彼がスペイン語を話そうとしたのを聞いたことがあるのですか?」 「はい」 「それで、彼はあまりうまくなかった?」 「うまくありませんでした」 「スペイン語の理解力はどうでしたか?」 「ええ。彼は話すときに訛りがありましたが、理解はしているようでした。時々、彼は無口を決め込んでいるのではないかと思うときもありました」 「どんな訛りだったか説明できますか?」 「ええ。彼がスペイン語を話すときは、スペイン語を母国語としない、米国人のような訛りでした。彼はいくつかのスペイン語の文章を聞き覚えたような感じでした」 「ダラスのモーテルに行ったと言いましたね。砂利の車道もあったと。そのモーテルの特徴はほかに何だったか言えますか?」 「郊外にありました。通りにダラスにようこそという看板が立っていました。“ザ・ブル”というレストランを通り過ぎました。そのとき、私の娘の好きそうなレストランだなと思いました。それから、フランクはモーテルでは隣続きの部屋を取ったのです」 「何部屋取ったのですか?」 「えっ、何ですか?」 「何部屋取ったのですか?」 「部屋ですか?二部屋です。二つの部屋の真ん中はドアで仕切られていて、それぞれの部屋にはダブルベッドが二つずつありました。モーテルに着くやいなや、私たちは新聞も電話も駄目だと言われました。外出もしませんでした。食事は部屋に運ばれてきました。ライフルも部屋の中に持ち込みました」 「ちょっと待って下さい。だれが新聞も駄目だと言ったのですか?」 「フランクです」 「フランクが責任者だったのですか?」 「彼が責任者でした」 「ほかにだれか命令する人はいなかったのですか?」 「いいえ」(続く)