カストロが愛した女スパイ93
▼オズワルド問題 マクドナルドは質問を続けた。「ロレンツさん。あなたはリー・ハーヴィー・オズワルドと名乗る男に会ったと述べましたね?」 「はい」 「五回ぐらい会ったと?」 「不規則に、そのくらい」 「私が数えたところでは、三回――。最初はマイアミの隠れ家で、二回目はオーランド・ボッシュの家で・・・」 「それから訓練所です」 「もう一度言ってもらえますか?」 「訓練所です」 「訓練所と、それにダラスへの旅行の時ですね」 「はい」 「いいでしょう。それでは最初に会ったときの話をして下さい。あなたは、あなたが言うところのマイアミの隠れ家で彼に会ったのですね?」 「はい」 「マイアミの一体どこにその家はあったのですか?」 「南西部だと思います。白い家で、だれかから借りていたのだと思います」 「当時、あなたはどこに住んでいたのですか?」 「(キューバの)反乱分子の一人として、リバーサイドホテルに住んでいました」 「失礼、もう一度言って下さい」 「リバーサイドホテルは、わたしたち反カストロ分子の泊まり場所でした。反乱分子たちは、後にピッグズ湾事件にかり出されたのです」 「マイアミ川のどのへんですか?」 「マイアミ川のそばです」 「分かりました」 「マイアミの町中の近くです」 「隠れ家は南西部だと言いましたね?」 「はい」 「南西部では、おおざっぱすぎますね。もうちょっと具体的にどこか言えませんか?」 「正確には分かりません。ズカス氏が運転して回ったときに、私は彼にその隠れ家がどこだか指し示したことはありますが。彼はマイアミの関税・入国審査局の人間です」 「そのとき隠れ家がどこにあるか指し示すことができたわけですか?」 「はい」 「あなたたちがその家を探し回った理由は何ですか?」 「彼も知りたがったからです」 「だれが知りたがったんですって?」 「そのスティーブ・ズカス氏です」 「我々も興味を持っています。何故あなたたちはその家に行こうと思ったのですか?」 「彼と行って、住所を確かめようとしたのです。そこが・・・」 「そうじゃなくてですね」と、マクドナルドはロレンツが自分の質問と異なる答えをしようとしたので遮った。 それでもロレンツは続けた。「そこが最初にオズィーに会った場所だからです」 「何故あなたは六〇年代の初めに、その家に行って、会ったのですか?」 「質問の意味が分かりませんが」 困惑したロレンツを見かねたクリーガーが口を挟んだ。「マクドナルド委員、多分あなたはこういう風に聞きたいのでは・・・」 マクドナルドはクリーガーを遮った。「私が質問をしているのです」 クリーガーがやけになって反論した。「あなたの質問がはっきりしないので、証人は理解できないでいるのです。あなたのことを助けてあげようとしているのに、その必要がないならそれもいいでしょう」(続く)