新聞記者の日常と憂鬱106
▼羽根の謎13(昨日の原稿の解説です。)最初の問題は、筆者本人が見つけた羽根のラインなのに、なぜ富山大学のY教授のグループの研究でわかったと書いたかだ。答えは、新聞記者は黒子で、あまり表に出ない存在だからであり、大学教授の名前を出したほうがニュースの信頼性やバリューが上がるからでもある。Y教授とは「尖山は古代ピラミッド!?」の原稿でお世話になった山口博教授のことだが、了解を得ていないので仮名にしてある。もちろん羽根のラインのことは山口教授にも事前に話してあり、竹内文書の研究を一緒にしているので、山口教授と私は一種の研究グループである。実際に原稿を出すときには、山口教授に原稿をチェックしてもらった後で出稿となる。最後のY教授の談話も、山口教授ならこのように言ってくれるだろうということで、私がかってに書いている。山口教授が別の表現のほうがいいということになれば、言われたとおりに直して出稿する。その時点でY教授は山口博教授に変わるわけだ。一方、富山医科薬科大学の荻田教授は厳密に言うとグループではないが、羽根のラインのことを話したら面白がって自説を語り始めたので、そのまま採用させてもらった。後に『「竹内文書」の謎を解く』でも紹介したが、光通信網は理系の教授らしい発想であると思う。原稿ではさすがに“超能力者”秋山氏の気球説や“金星人”の話までは書けなかった。字数に制限があることもあるが、“良識ある報道機関”が超能力者や金星人の話を真面目に取り上げることはまず不可能であろう。最近、テレビ番組などで「超能力捜査官」がよく登場するようになったものの、大手新聞を読めばわかるように、超能力者やUFOはいわゆる市民権を得ているとはいえない。つまり実在すると認めていないのである。市民権を得てないものには触れないのが新聞社の常である。触れるとしても、茶化す場合が多い。記事の構成は「黒三ダムと朝鮮人」の原稿と同じである。最初のリードで一番知らせたいことをすべて書く。とくに重要なのは意義付けである。なぜこれがニュースなのかを読者に納得させなければならない。黒三ダムのときは、黒三ダム建設の難工事に従事した労働者の大半が朝鮮人であったことはこれまで知られていなかった、という点がポイントであった。この羽根のラインの原稿では、もしかしたら「知られざる古代王朝の痕跡ではないか」という点が最重要ポイントである。リードの後に来るのが、具体的な記述だ。ここでは日本海側から太平洋側に至る羽根の地名が紹介されている。その後の段落では、リードで紹介した要素を詳述していく。竹内文書とは何かとか、知られざる古代王朝があったとする理由はなにか、といったことを肉付けしていくわけだ。最後の締めは、Y教授の談話である。このように最初に一番重要なことを書き、あとからリードで触れたことの細部を記述していく書き方を逆三角形スタイルという。英語の論文を書くときも、同じである。(続く)