物理学が東洋哲学に近づきつつあるのかどうかについての考察
▼魂の双子と陰陽の思想と素粒子のパートナー近年の物理学は東洋の哲学に限りなく近づいてきているような気がする。たとえば、ひも理論を紐解いていくと、「魂の双子」ともいえるペアが出てくる。双子といっても、瓜二つの双子という意味でなく、古代中国の陰陽の思想に似た双子である。陰陽の思想によると、森羅万象、宇宙のありとあらゆる事物は陰と陽の二つに分類できるという。陰と陽は互いに対立する属性をもった二つの気であり、万物の生成消滅といった変化はこの二つの気によって起こるのだそうだ。陰陽の思想ほど強烈ではないが、ひも理論の宇宙論ではすべての素粒子に超対称性をもったパートナーが存在すると考える。そのほうが宇宙は限りなくエレガントで美しくなるからだ。物理学者はそのペアをフェルミオンとボソンと名づけた。その分類の仕方はこうである。宇宙のすべての粒子は、さまざまな速さで回転(スピン)するコマにたとえられる。スピン1をもつ光子や、スピン2をもつグラビトン(重力子=存在が推定されているだけ)など整数のスピンをもつ素粒子をボソンとした。これに対し、物質の粒子である陽子、電子、中性子、クォークのように、半整数(1/2, 3/2, 5/2など)のスピンをもつ素粒子をフェルミオンとした。この理論によれば、どのフェルミオンもどれかのボソンとペアになっている。それはスピンが0になるペアで、それぞれの粒子の前に「ス(s)」をつける。たとえば、電子のパートナーは「ス電子」と呼ぶ。このように、すべての粒子に対し、ス粒子というパートナーが存在することになるのだが、それらはまだ観測されていない。いまのところ、あくまでも理論上の話だ。ただしこの仮説が正しければ理論上、宇宙のすべての粒子をひとつに統合できるのである。(続く)