出雲族と大和族の話(第9話)
記紀に記された日本神話の本質が段々とわかってきたのではないでしょうか。大和族側から見た都合のいい物語のオンパレードなわけですね。それにしても私が感心するのは、大和族に属する武内宿禰さんの潔さです。大和族側の系図改ざんの事実を認めるだけでなく、宿禰自身が秘儀・行法を出雲族から奪ったこと、さらには原日本人の神祇や記録を実質的に奪った(「残している」)ことも認めているからです。拙著『竹内文書の謎を解く』でも金井南龍さんの意見としてご紹介しましたが、5世紀末ごろ神代文字で書かれた神代の歴史である「竹内文書」を漢字かな交じり文に直したうえで写筆したとされる、武内宿禰の孫・平群真鳥(武内宿禰さんによると、第8世武内宿禰)の「へぐり(平群)」は、飛騨地方の方言「へぐる」であり、「裏切る」「だます」という意味があるのだといいます。また、武内宿禰の「すくね」も「くすねる」を連想させますよね。あくまでも私の推測ですが、もし武内宿禰さんが口伝で継承している「正統竹内文書」や巨麿が公開した「竹内文書」が大和族によって改ざんされる前の原日本人の記録をある程度正確に残しているのだとしたら、それは大和族の良心(あるいは良心の呵責)がなせる業であったのではないでしょうか。大和族が改ざんした歴史があまりにもひどかったので、「あれ(記紀など)は、本当の記録をくすねたり、だまし取ったりして都合よく改ざんした嘘っぱちなんだよね」ということを後世の人たちに暗示するために、わざと自分たちの名に「だます」「くすねる」を連想させる文字をいれたのではないかと思ってしまうわけです。さて、さらに日本の神話を読み解いてゆきましょう。アマテラスの称号を統一王朝に取られた大和族の一部は、何とか祭祀王の称号を取り返そうとします。このままではスサノオの息子で初代天皇のニギハヤヒの天下ですよね。そこで念使いの集団を使ってニギハヤヒの周りに結界を張り巡らせるなど妨害工作を開始すると同時に、「出自不明の大国主」を抱き込もうとします。大国主はスサノオの娘と結婚して出雲族の王となった人物でしたね。記紀では、高天原を追放され出雲国に降り立ったスサノオの子孫、あるいは実の息子ということになっています。でも大国主さんは、どうやらスサノオの子孫でも実の息子でもないみたいなんですね。私が考える結論を先にお伝えすると、越の国などにいた原日本人の子孫か、あるいは古代ヘブライ人など大陸から来た人物ではないでしょうか。大国主の話を書くと長くなりそうなので、大国主が何者なのかの考察は、次回にいたしたいと思います。(続く)