5000年前の驚異の測量技術(その20:屈折ピラミッド)
メイドゥームのピラミッドの後、同じスネフェル王の時代に「屈折ピラミッド」が建造されました。ピラミッド第五号ですね。屈折ピラミッドはジョセル王のピラミッドと小山群2の中心を結んだ直線上で、その直線を3対1に分割する地点付近に造られました。かつその場所は、ジョセル王のピラミッドとメイドゥームのピラミッドを結んだ直線上で、その直線を1対5に分割する点でもあります。つまりかなり綿密に距離と方角を定めて、建造場所が決定されたことがわかるわけです。でも実は、ジョセル王のピラミッドと屈折ピラミッド、それにメイドゥームのピラミッドは直線上にあると言っても、微妙にずれているんです。ジョセル王のピラミッドとメイドゥームのピラミッドを結んだ直線は、厳密に言うと、屈折ピラミッドの基底部北西端を通っているんですね。その理由はこちらのイラストをご覧ください。専属のイラストレーターさんに書いてもらいました。このイラストは、ジョセル王のピラミッドの頂上から南のメイドゥーム方面を見たときの風景を描いたものです。ただし、このイラストの視点の位置は、ジョセル王のピラミッドの頂上の少し上の空間です。だから本当はピラミッド頂上からの風景は、もうちょっと低い位置となります。それでも計算上、ジョセル王のピラミッドの上からなら、メイドゥームのピラミッドはこのように見えたはずです。中央の線は、ジョセル王とメイドゥームのピラミッドを結んだ直線です。なお上の図の白いピラミッドと赤いピラミッドは後の時代に造られたものですから、ここでは説明しません。注目してほしいのは、その直線が屈折ピラミッドの基底部北西角を通っていることです。先ににメイドゥームのピラミッドが造られていますから、ジョセル王のピラミッドから見てメイドゥームのピラミッドが見えなくならないように注意深く屈折ピラミッドが建造されたことがわかります。ちなみに上のイラストは、実際のピラミッドの高さや方位角などを計算して紙でミニチュアのピラミッドを作って、実際にそれらを縮尺に応じて床の上に並べてみて作製しました。そのときの風景がこちらです。安上がりの紙のピラミッドですから、角度までは縮尺しませんでしたが、高さや距離は正確に計算して縮尺しました。で、この時配置されたピラミッドの見え方を参考にしながら、イラストを描いてもらったわけです。地形などを考慮に入れず、ほぼ平坦であると仮定していますから必ずしも正確とは言えませんが、予算の範囲内で努力して作図したわけですね。こうした作業を重ねて、本書258ページの図6-2や265ページの図6-3が作成されたました。(続く)