ザ・イヤー・オブ・1980(その60)
私が履修したフランス文学研究入門コースは、宿題も大変でした。 一週間に一冊のリーディング・アサインメントのほかに、仏作文、英語訳の宿題が出ます。 英文も仏文も外国語である私にとっては、二重苦です。 英語訳は自分でできましたが、仏作文はダーウィン・カレッジの寮生で、留学生オリエンテーションで親しくなったフランス人のブリジッドやエレンにずいぶん助けてもらいました。 特にブリジッドは「私の勉強にもなるから」と嫌な顔をせずに手伝ってくれたので、とても助かりました。優しくて、親切だったブリジッド。今はどうしているんでしょうね。その節は本当にお世話になりました。 後で分かったのですが、イギリス人の学生にとっても、このコースは大変だったそうです。 ギブソン教授のセミナーには、私やアメリカ人留学生のスーザンのほかに、イギリス人の年配の女性も一緒に学んでいました。 たぶん、子育てが終わって自分の時間が比較的もてるようになった50歳くらいの方であったと思います。イギリスの大学では、学歴がなくても面接などで資質があるとわかれば、社会で十分経験を積んだ知的な熟年を学生(Mature Students)として入学させているとのことです。 あるとき、その方がセミナーの最中に泣き出してしまったことがありました。 ギブソン教授がなだめますが、泣き止みません。 話を聞くと、家事など私的な用事で宿題をやる時間がなくて授業についていけなくなったと言います。 確かに私も何度も泣きそうになりました。もちろん泣きませんでしたが、半べそ状態でした。 その方も、たまたま感情が高ぶって泣いてしまいましたが、その後立ち直って、無事にコースを修了したと思います。本当にこのコースにはよく鍛えられました。 (続く)