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テーマ:今日聴いた音楽(75568)
カテゴリ:ファンタジックな音楽
初めて音楽について書きます。といっても、やっぱりファンタジーがらみなんですが。
古いジャズIt's Only A Paper Moon(「ペーパー・ムーン」)という曲をこのところなぜか聞きたくて、手持ちのCD「上海バンスキング」(映画もあったけど、吉田日出子の舞台の方)を何度もかけていました。他にもYou Tubeでいろんな人が歌っているのを順番に聴いたりとか。 そしたら発売されたばかりのポール・マッカートニーのアルバムKISSES ON THE BOTTOMにこの曲が入っていることが分かって、衝動買いしてしまいました むかし新書館から「ペーパームーン」という雑誌や本が出ていたことがあって、雑誌の方は印象的な表紙をめくると私の好きな佐藤史生をはじめ竹宮恵子とか萩尾望都とかのSFやファンタジックな作品がいっぱい載っていたのでした。特集本にはトールキンなどもとりあげられていましたっけ。 そのタイトルからの連想でこの曲を知ったのでしたが、実はこの曲をテーマに?した70年代のノスタルジックな映画(画像はそのDVD)もあったりして、「ペーパー・ムーン」という言葉は何だか魔法のような響きを持っていました。 歌詞の大意は 「厚紙の海の上にただよう紙のお月様にすぎなくても、もしあなたが私を信じてくれれば、それは作り物じゃなくなるよ」 「モスリンの木に架かった帆布の空でも、私を信じてくれれば、作り物じゃなくなるよ」 「あなたの愛がなければ浮かれ騒ぎのパレードだけど・・・」 みたいな。 この歌詞から私がまた連想したのが、長野まゆみ『少年アリス』で、主人公が真夜中の学校から群青色のビロードでできた「夜空」にブリキの月と貝殻の星を取りつけにいく場面。ありえないと思っていたのに、「教師」に促されるまま空を飛んでみると夜空は本当にビロードの天幕になっており、そこへクレーンの鎖でつるされた月がのぼっていく・・・ さらに、飛浩隆『グラン・ヴァカンス』の舞台、サイバー空間の「ハリガミの海」。 それらは作り物でありながらとてもリアルで、既視感をさそうほどノスタルジックで、魅力的なんですね。 最後に、歌詞や物語に出てくる「作り物」が信頼と愛(!)によって本物よりリアルにいとおしくなるという現象については、ロマン派の詩人コールリッジの言葉「自発的に不信感を停止すること」(willing suspension of disbelief)のファンタジックな解釈なんじゃないかと思うのです。 お芝居の舞台の上で紙細工の月が本物であるためには、演じる人も観る人も、好意的に想像力を働かせてそれを信じなくてはならない。逆に言うと、想像力と愛さえあれば、作り物でもいいんですよね。それどころか、シンプルな作り物ほど、想像力と愛の注ぎようによって、どんなものにでもなれる可能性を秘めています。 CGやSFX、3Dなど技術が進んで映像世界はほんとにリアルになってきましたが、もしかするとそれは逆に、観る側の想像力(そして愛も?)を働かせる余地を奪っているのかもしれません。 いろいろ考えさせられる「ペーパー・ムーン」ですが、そんな思いもポール・マッカートニーの甘くて軽やかな声にとけていきます。いまだに、いい声ですねえ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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