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テーマ:これまでに読んだ本(1062)
カテゴリ:かるいノリで古典を
リチャード三世は、確か「ナルニア国ものがたり」のルーシーが「バラ戦争よりややこしいわ」と言っていた、そのWars of the Roses(15世紀)の白バラ側(ヨーク家)の王様。シェイクスピアの劇が有名ですが、私は森川久美の「天の戴冠」の方が先でした。
この話のリチャードは、キラキラした金髪の兄たちから一歩下がったところにひっそりと立つ、ナイーブな黒髪の「弟」です。無口で内向的で感情表現がヘタ、しかし(そのぶん)戦には強いという、複雑な性格。カリスマ的な魅力を持つ兄の「影」として、兄に対する愛憎いりまじった感情を自分でもてあましています。 そして、兄王が病死すると後継争いのごたごたの末、自分が王になりますが、やがて赤バラ側(ランカスター家)の巻き返しにあって、ボズワースで戦死します。戦いで死んだ王様というのは、イギリスではほとんどいないそうです。 最後の戦闘におもむく時の彼のセリフ、 もぐらは・・・(中略)・・・土を掘ることをやめるわけにはいかない/ 掘り続け…土はもぐらを埋め続ける/ ・・・〔王冠など〕すてておけ!/ そんなものに心を動かされたことはない!! ――森川久美傑作集『青色廃園』より「天の戴冠」 というくだりが印象に残った私は、これには原典があるに違いないと思い、シェイクスピアの『リチャード三世』を買い求めました。 ところが、びっくりするほど違うんですね、こちらのリチャードは。まず口絵にある舞台俳優(ロバート・ヘルプマン)さんの、ものすごい目ヂカラに衝撃を受けてしまいます(左画像)。シェイクスピアのリチャードは生まれながらの大悪党、実の母からも呪われる、一見、悪魔の化身みたいな人物なのです。 しかし解説によると、このリチャードも一筋縄ではいかない複雑な性格を持っているようで、「冗談や皮肉を弄ぶ明るい意識家」とか、「おのれの才能に自信があればこそ」自分のさえない容姿を「皮肉たっぷり、上機嫌に、誇張して」語るのだと評されています。 観客(=読者)は、ただのひねくれ者ではなくて、自覚して自ら悪役を演じきっているリチャード、それを演じる俳優さん、という二重構造を楽しめるのでした。 ちなみにこちらのリチャードの、最後の戦闘あたりのセリフは、 馬をくれ! 馬を! 代りにこの国をやるぞ、馬をくれ! ――シェイクスピア『リチャード三世』福田恆存訳 です。モグラは出てきません。一説によると、愛馬ウォールが倒されたため、リチャードは落馬して、なおも戦い続けますがついに殺されたのだそうです。 そして、余談ですが有名なマザー・グース「ハンプティ・ダンプティ」は、塀(ウォール)から落ちてつぶれてしまったハンプティ(=ズングリムックリ)が実はリチャード三世のことだという説もあるようです。 ともあれ、最後の戦いで(そして実はそれまでもずっと)リチャードが、王位に執着していたのではなく、彼自身には彼なりの別の人生観があった、というのは二つの物語の共通点といえるようです。 ただの悪役、ただのアンチ・ヒーローではない、奥の深い二つのリチャード三世像。彼を扱った作品を他にも読んでみたいという気にさせられます。 ジョセフィン・テイの『時の娘』を読もうと思うのですが、なぜか近所の図書館にはないので未読です・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 13, 2012 09:45:27 PM
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