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カテゴリ:かるいノリで古典を
岩波文庫にも『ロランの歌』がありますが、むかし絶版(岩波の古典はときどき復刊されますがまたすぐ絶版になります)だったので、当時売りこみ中だったちくま文庫「中世文学集」の『ローランの歌 狐物語』を入手しました。
「ローランの歌」は中世フランスの英雄叙事詩(武勲の歌=シャンソン・ド・ジュスト)の最高傑作です。世界史でおなじみの、シャルルマーニュ大帝がスペインのイスラム教徒と戦ったころのお話。 シャルルマーニュ大帝の甥ローランは、王の部下「十二人衆」の筆頭で、若くて腕自慢の熱血漢。しかし義父ガヌロンの裏切りによって、イスラム教徒の大軍と戦う羽目になり、奮闘するもついに戦死します。 一人で百人倒したなどという誇張表現の中に、槍や剣で血みどろになったり脳みそが出ちゃったりするリアルさが同居するところは、『イーリアス』以来の叙事詩の伝統なのでしょうか。 近代小説ではないのでクドい人物描写はないですが、ローランの一途さ、若さゆえの気の逸りが彼の行動やせりふから感じられ、一方ナンバー2で彼の親友である「智将オリヴィエ」の思慮深さ、思いやりも伝わってきます。 敵の大軍が迫るのを見て、オリヴィエは救援の角笛を吹いて王シャルルマーニュの本隊を呼ぼうと言いますが、ローランは、殿後を守る役に選ばれた以上は臆病なまねはできないと言い返します。 吹け、吹かぬと争ううちに敵と入り乱れて大苦戦となり、十二人衆は一人また一人とたおされていきます。ここへきてようやくローランは「角笛を吹こう」と言いますが、もはや時機を逸しています。オリヴィエは 「先刻吹けと奨(すす)めしとき、吹かざりけるが 吹きたくば、吹けよかし、・・・剛勇の士のまさに恥ずべき振舞いなるを!」 と責めますが、その時ローランが傷を負って血に染まっているのに気づいて「はっと胸つかれ、親友愛がこみ上げてくる」(注釈)のです。 ローランは血を吐きながら角笛を吹きますが、結局オリヴィエも討たれ、ローラン自身も戦死したところへ、息せき切ってシャルルマーニュ王が本隊を率いて引き返してくるという、ドラマチックで悲劇的なクライマックス。 一言で言うとこの物語、ヨーロッパ版「平家物語」ですね。華やかで高潔な騎士道精神とキリスト教精神あふれる、悲劇のヒーローたちの合戦の物語が、長々しく格調高く吟遊詩人によってうたわれるのです。 日本語訳は慣れないととっつきにくい擬古文体ですが、軍記物だと思って頭の中で講談みたいに熱く語ってみると、とっても素敵です。 何より、『指輪物語』系のファンタジーにはおなじみの、由緒ある名剣とか、朗々とひびく角笛などの原型がここに! ローランのデュランダルとアラゴルンのエレンディルは音が似ているし、角笛オリファンの響くさまは、ボロミアの角笛みたい! トールキンの目指した格調高い祖国の英雄叙事詩って、まさにこういうのだったのだと納得できます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 7, 2012 11:47:48 PM
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