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カテゴリ:気になる絵本
昨年ご紹介した『ねこガム』にも通じるような、現実とファンタジー世界が交錯するちょっとこわい絵本、『ヘリオさんとふしぎななべ』。 不思議なお鍋(または、釜)の昔話って、よくありますね。命じるとおかゆがわき出つづけて大洪水になる鍋(グリム童話)が有名ですが、他にもしゃべる鍋とか、少しの物を入れるとたくさんに増える鍋、死人を入れると生き返る鍋など。 鍋は豊かさのシンボルなので、死んだものを受け入れ生を生み出す「大地」とか「実り」とかにも関係があるのでしょう(ケルト神話、ダグデの大鍋)。 そんな不思議な鍋の一種と思われる、穴の空いた鍋が描かれた絵を、貧乏で空腹な絵描き(名前が何だか西欧風にハラ・ヘリオというのが良い)が買います。禁を破って絵に手を加え、穴をふさいだら・・・。 魔法が作動してしまい、絵の鍋の中においしそうな料理がわき出して、ヘリオさんを誘います。またしても禁を破って絵の中にドアを描き加えることで、異世界への通路を自らつくりだしてしまうヘリオさん。インスパイアされた芸術家の宿命というか、普通でない精神状態です。 いちばんゾッとする瞬間は、ヘリオさんが絵の中に閉じこめられ、もといた世界を覗くと、自分が腰掛けているべき椅子の上に、絵の中にあったはずの鍋が居る(ある)というところ。現実とファンタジー、人間(生きたもの)と道具(死んだもの)、自分(絵描き)と対象物(絵)との、逆転。 ヘリオさんはどうやって再び元の世界へ戻ることができるのか。 禁を破ったつぐないをしたり、反省したり、後戻りするのではありません。反対に、ヘリオさんは絵描き(創造者)としての自分をとことん追求して、さらに描き続けることで脱出を図ります。 もちろん、最後には何とか成功するのですが、鍋は消えてしまいます(あとのページをよく探すと、素知らぬ顔?でよその人のもとへ行っていることがわかります)。絵の中には、彼が必死で描いた脱出用のはしごが。 結局、おいしそうにぐつぐつと煮立つ豊穣の鍋のある世界(=芸術)を創りだしていたのは、いつも空腹な、ヘリオさん自身なんですよね。無から芸術を生み出すときの、苦労やパワー、現実との遊離性などが、ストーリーにだぶって感じられます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 26, 2013 10:12:57 PM
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