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私はガイコツは苦手ですが、表紙の、ソフトハットをかぶったガイコツ男を見て気に入ったのか、娘が図書館から借りてきました。
作者はアイルランド人で、ダブリンが舞台です。といっても現代の都会のダブリン、その裏世界で魔法使いたちが戦いを繰り広げるところへ、12歳の少女が参加。持ち前の気の強さと不屈の精神でガイコツ男、スカルダガリー・プリーザントと一緒に数々の危うい冒険をこなしていきます。 まず感じたのは、主人公の少女ステファニーの積極性です。大好きな伯父が変死し遺産を譲られたとはいえ、伯父の屋敷にいたせいでいきなり怪人に殺されかけたのに、怖じ気づくところか、謎のガイコツ男とともにあやしい魔法戦争にすすんで足を踏み入れるのです; 「…学校では絶対に教えてくれないことだわ。これまで存在するとは思っていなかった世界を、私は今夜目にしてしまったのよ!」 「その世界に戻りたいなんて言わないでくれよ。こっちにいた方が安全なんだから」 「普通の世界なんて、私にはもうたくさんだわ」 ――デレク・ランディ『スカルダガリー1』駒沢敏器訳 不気味な外見で魔法も使うガイコツ男スカルダガリーに対しても、知り合ってすぐにタメ口をたたき、彼の頭について「そこにあるものは空洞」、「誓うとは言っても、あなたには心臓がないけれど」などとやりこめます。12歳という年齢を考えれば、堂々たるものです。 彼女には気遣ってくれる両親がおり、日常に特に悩みはなさそうです。しかし彼女は学校で自分が周囲にとけこめないと感じており、ためらいなく自己を主張し、納得のいかないことにはとことん反発します。 河合隼雄の言うところの、思春期少女の「異種」の自覚が、ステファニーには強烈にあるようです。自分は他の人とはちがう、どこか別の世界に属している、だから現実社会(学校、家庭、友人関係)などにうまくとけこめないのだ・・・という感じです。 私も中学生のころにはそんな気持ちになったものですが、ステファニーはその“実は自分が本当に属している別世界”を、スカルダガリーたちの世界だと直感的に感じ取り、自分も魔法を使えるようになりたいと思うのです。 同じような例は小野不由美の「十二国記」の始まりの巻、ヒロインの陽子が異世界に行くくだりなどにも見られます。けれどなじめなくても現実は現実、おまけに異世界は現実に比べるとすさまじい場所なので、陽子などは自分に属する異世界を受け入れるまでに長いこと悩んだり苦しんだりします。 それに比べると、ステファニーのあっさりと度胸のあること。痛い目にあっても、死にかけても、へこたれません。まるで「プリキュア」とか少女戦士もののアニメヒロインのようです。読者はこれを非現実的と思ってしまうとうまく物語にのれませんが、強気前向きオンリーな性格として納得してしまうと、ホラーで痛いわりには軽いタッチのストーリー展開とあいまって、小気味よく読み進めることができます。 また、謎のヒーロー、スカルダガリーの性格の明るさ・軽さも印象的です。妻子を殺され自分も拷問の果てに殺されたあと、執念の復活を遂げた復讐の鬼、という設定なのに、高級車ベントレーに乗りリボルバーを操るキザな私立探偵。軽快な語り口でステファニーとよいコンビを組み、また何度も殺されるほどひどい目にあっても、カラリとしてまた現れます。人生を達観したガイコツならではの味のある軽さです。何だか、「ワンピース」のガイコツ男ブルックを思い起こしてしまいました。 彼はステファニーに、自分で自分を表す名前を付けよと教えますが、「スカルダガリー skulduggery 」を辞書で調べてみると、「不正行為、いんちき、詐欺」とあり、「プリーザント」と合わせると「気のいいインチキ野郎」みたいな意味の名前でした。もちろんガイコツskullともかけているのですけど。 物語には終盤、いろいろどんでん返しがありますが、どれも軽めで活劇調。続巻もあるようで、キャラクターの魅力がさらに冴え渡りそうです。 内容的にファンタジーではないけれど、ミステリー・ホラー・魔法好きには良いエンターテイメントだと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 15, 2013 12:29:13 AM
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