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カテゴリ:かるいノリで古典を
『夜の写本師』からの連想で、むかし父の知人?を通して手に入った非売品『メディチ家のイソップ物語』をよっこらしょと引っ張り出してみました。
これはバブル時代のメセナ事業のさかんなりしころ(実際はバブル後の1992年に刊行)、安田火災がつくった豪華翻訳復刻版で、布ばり(ハコも布ばりにコーティング)、小口は金色。メディチ家に伝わる豪華手書き本の英語復刻版を全ページカラーで載せたうえ、日本語対訳をつけたというもの。そのへんの美術展の図録よりずっと上等でございます。 美しい挿絵と周囲のカラフルな草花の装飾、インクの濃淡もはっきりとわかる手書きのギリシャ語など、ながめるだけでうっとりの世界。大もとは、かのロレンツォ・メディチが息子のために作らせた本だそうで、メディチ家こそは「メセナの元祖」だと、当時の安田火災の取締役さんが巻頭の辞に書いておられます。 なるほどルネッサンス期のフィレンツェとバブル期のニッポンと、比べてみるのも一興かもしれません。 なかみは100以上の短い寓話+教訓がずらりと並んでいます。日本でおなじみの話では、「ありとはと」(小学校の教科書にもありましたっけ)と「金の卵を産む雌鳥」、「セミとアリ」(アリとキリギリス)もあります。 イソップ寓話は西洋文化の源流の一つらしく、他にも、どこかで聞いたようなモチーフが次々と出てきます。 たとえば、「ライオンの皮をかぶったロバ」の話が2つあるのですが、ああ、これはC・S・ルイス「ナルニア」シリーズの『さいごの戦い』に出てくる、ライオンの皮をかぶって皆をだますロバのトマドイだなあ、と思い出します。 挿絵もとってもおもしろいです。起承転結、いくつかの場面を順番に描いてあります。一つの絵の中に登場人物が2体も3体も描いてありますが、よく見るとコマ割りこそないけれどマンガのようにちゃんと絵だけでもストーリーを追っていけるようになっているのです。 どの絵も、登場人物(動物が多い)の細かい表情から背景まで、じつに緻密に描かれています。キツネやワシ、ニワトリなど身近な動物は真にせまっている一方、たとえば「ワニ」は胴長のキツネにうろことくるくるのしっぽをつけたような、奇妙な姿で描かれています。当時の挿絵画家はワニを知らなかったのですね。 古代ギリシャの原典の雰囲気を伝えているのが、ゼウスやヘルメスなどギリシャの神々が登場するお話。おかしいのは、神様だとて良い役回りだとは限らないところです。たとえば、「ヘルメス神と彫刻家」では、人間に身をやつしたヘルメス神が、大神ゼウスやその妃ヘラの彫像の値段を尋ねます。そのあとで、自分(ヘルメス)の像の値段を訊いたところ、 「ゼウスとヘラを両方お買いあげなら、どうぞヘルメスはただで持っていってください」 ――『メディチ家のイソップ物語』野口由紀子訳 して、その教訓は 「うぬぼれが強く、他人の評価以上に自分がすばらしいと思っている人間は、このような目にあう。」 うーむ、ヘルメスもさんざんな言われようですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 18, 2013 11:56:58 PM
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