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テーマ:本のある暮らし(3311)
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とても幼いころ親しんだ本は、内容よりも、表紙や挿絵、字づらが印象に残っている、という話(本の思い出話幼年編1)のつづき。
祖父の家に行くと、階段下の暗い物置に、年上の従兄弟たちの読み古した本や雑誌が積まれていました。かたっぱしから読んでいきましたが、『アラビアンナイト』の怪鳥の巨大な卵の挿絵、『ジャングル・ブック』のリアルな動物の絵(とくに黒ヒョウのバギーラ)などがお気に入りで、話の内容を忘れたので後年タイトルをたよりに買い直したら、挿絵が違っていてがっかりしたものです。 これらはたぶん、講談社の世界名作全集というシリーズものでした。ハコと表紙には西洋の紋章に似せた模様がついていて、牡鹿の頭や獅子、帆船などの意匠が描かれ、とても貴重な本に思えました。 のちに祖父が亡くなって家財を処分したとき、私は形見分けと称して欲しい本を厳選したのですが、その1冊がこのシリーズの『ギリシア神話』でした。この本で初めて神話というジャンルを知った私は、このような世界の成り立ちや古い話の載った本は、ふつうの物語本より格が上である、と判断して持ち帰ったのです。 それに、その本には幼い私にとって衝撃的だった話と挿絵がありました。神々の天上の火を盗んだプロメーテウスが、その罰にコーカサスの岩山に縛られていて、ハゲタカが彼の肝臓をついばむという絵です。子供向きの本だというのに非常にリアルな挿絵だったため、最初はおそろしくてそのページを見るのがいやでした。 そこをそっと飛ばして、大好きな、ヘルメース神の誕生の話や、ペルセウスのメズーサ退治の話をいつも読むのですが、どうしても、人間に火をくれたために罰せられた神さまの話を忘れることはできませんでした。 今にして思えば、そのとき私は人類の原罪というものをおぼろげながら初めて知って、おののいたのだと思います。 この本は今でも私の本棚にあります。日本の神話より先に愛読したせいで、私の世界観の底辺にはギリシア神話が根づいてしまいました。 さて、ほかに、書名も内容もさだかでないある昔話が、忘れられません。 冒頭に、井戸端に茂るブドウとロバという挿絵があり、「ナポリ」の話でした。覚えているのはそれだけなのに、今でもナポリという町の名を聞くたび、私はそこにはぶどうのからんだ井戸があり、そのかたわらには首をうつむけたロバが立っているのだと思えてしまうのです。 祖父の家の二階には、まっくろな古い本棚があって、そのきしむ棚板の上に、これまた黒ずんだ背表紙の古い童話集などが並んでいました。そのカビくさい字ばかりのページの中に私は、「おとのくにとにほひのくに」というタイトルを見つけたことがあります。 その旧仮名遣いの、異境めいたひらがなの並び。ごく短い、起承転結もないようなおとぎ話だったと思いますが、仮名遣いが見慣れぬせいで、魅力は5割り増しぐらいに思えました。黒い本棚の黒い表紙の内側でこの話は、現代語しか知らぬ私を異世界に誘いこもうとじっと機会をうかがっていた・・・そんな気がします。 祖父の家からはほかに、椋鳩十の『きえたキツネ』(小峰書店)が私のもとへ来ました。やはり、動物小説ばかりでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 19, 2014 11:46:40 PM
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