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HANNAのファンタジー気分

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June 13, 2016
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 とかく好き嫌い?ある作品との噂で敬遠していましたが、録画してあったのを、最近やっと観てみました。

 なるほど、好き嫌い、賛否両論、わかる気がします。

 どこをとっても、なにかアンバランスなんですね。キャラクターの絵は少女漫画風でデフォルメされててかわいい。背景の街並みとか大自然は、マニアックなまでに実写に近い美しさ。まずこれがちょっとアンバランス。(どうしても比べてしまうんですが)ジブリも、キャラはデフォルメされ背景はリアルだけど、ジブリ背景のリアルさは、絵としてのリアルで、実写とは少し違うところを目指している。それが、細田アニメ(初めて観ましたけど)は実写風な背景の中でキャラが浮く感じがします。
 もしかして、わざとそれを狙っているのかしら? それなら、分かるけど。「おとぎ話のよう」なストーリーが現代にリアルに起こった、その現実離れ感を表しているのなら。

 そのストーリーも、バランスが取れていない気がします。純愛と子育てを中心に据えているようですが、描き方が浅い!と不満に思ってしまうところがいっぱい。
 主人公の若き大学生「花」と相手の狼男は、都会の片隅で「神田川」(かぐや姫の)みたいに貧乏だけど幸せな同棲生活をするのはいいけど、なぜ安易に無責任に子供を作ってしまうのでしょう。語り手の娘も無批判で、まるで良いことのように描かれています。
 おおかみこどもを産むということは、普通の子育てとは違う困難が自分たちにも子供たちにもふりかかると分かっていて、あえて選択したのでしょうか。たとえば、今後の万難を予測してもなお、おおかみの血統を絶やさないべきなのか、それとも・・・という葛藤があってしかるべきなのに、まったく描かれていません。

 当局が「お子さんが健診を受けていませんよ。ネグレクトと疑われますよ」と訪ねて来るところなど現実味のある場面が多くある割に、最後に「雨」が狼として山に去った時は、一人前になった息子の独り立ちの感動ばかりが描かれ、当局や警察の追及にどう対処したのか、省略されています。
 不登校ぎみの10歳の子供が行方不明になったのに、親が捜索願も出さなかった、では犯罪です。
 もし、そこのところをファンタジーとして深く追及しないのなら、児童相談所の訪問もナシにするべきです。

 同じような不均衡は、田舎暮らしのシビアさをリアルに追及する場面がある一方で、あまりにたやすく廃屋の修繕や農作業ができてしまったり、生活費が稼げたりするツメの甘さにも露呈されています。後半では特に、生活に追いまくられているはずの「花」が、昼間から家に居て家事をしているだけの場面が多く、いつの間にかピカピカのジープが家にあったりして(あら貧乏学生だったのに自動車免許は持っていたのかしら、持ってなかったならこんな田舎でいつどうやって取ったのかしら?)、現実味がありません。

 そして、終わり方に、ちょっとあきれてしまいました。狼男の死後、子供のためだけにがむしゃらに生きてきた「花」は、娘も息子も家を離れたあとも、山奥のがらんと広い、キレイすぎる家に、ひとりで静かに暮らしているというのです。しかも、それを当たり前の理想的という口調でこのお話は語り終えられます。
 なんと気の毒な「花」でしょう。苦学して大学に行っていたのに、そのころ描いていた将来の夢はどうなったのでしょう。伴侶の狼男もあっという間に亡くし、子育ても12年間で終わってしまって、たぶん子供たちはなかなか家に戻ることもないでしょう。人間として生きることを選んだ「雪」も、農業に興味を持つとかそういう設定もなく、きっと都会に行って、狼男と同様、本当の自分を隠し偽りながら困難な人生を歩むのでしょうか(もちろん、草平くんのような理解者も居るでしょうが)。
 子育て家庭や一人親家庭にとって住みづらい都会、住みづらい田舎、など現代の現実社会の問題点を描き出すのなら、最後までその問題点を追求してほしいところ。場当たり的な問題提起だけで、ストーリーの邪魔になりそうな問題点は、ファンタジーだからとスルーする、というのは許されないアンバランスだと思います。

 最後に、せっかく狼男やおおかみこどもという、魅力的な設定なのですから、もうちょっとそのワイルドな魅力や絶滅の歴史などにも触れてほしかったです。たとえば、狼男には、おおかみらしい魅力も苦悩もちっともありません。孤独な若者というだけになっているような気が・・・

 文句ばかり書き連ねてしまいましたが、それというのも、この作品の絵も設定もアイデアもすばらしいと思えるだけに、もう少し深く完成度の高いものを観たいという思いがどうしても出てきたからなのでした。





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Last updated  June 14, 2016 01:22:09 AM
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