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手元に本がないのですが、ノーベル賞受賞のカズオ・イシグロ氏の紹介やインタビューにプルーストが出てきたので、『日の名残り』を読んだときのことを思い出しました。
日本人と思われる名前の作者なのに、英国執事を主人公にして、英国人にすらわかりにくいのではないかと思われる第二次大戦前のイギリスのあれこれ(=対独政策)を背景ににおわせながら、伝統的お屋敷の移り変わりを描く…なんと英国的な小説だろうと思ったものです。 主人公は自分の半生を振り返りながらかつての仕事仲間であった女性に再会しに行くのですが、ここでたとえばアメリカ人なら、昔は出来なかった恋の告白を敢行するとか、なにか行動に出るかもしれません。 しかし英国執事は、センチメンタルに流されず万事控えめに、しかも自分なりに人生やお屋敷、とりまく歴史を把握していき、その結果できあがった彼自身の世界と物語にふさわしい、静かな結末(人生の夕映え、お屋敷の夕映え、大英帝国の夕映え)に身をゆだねるのです。 そこには、客観的な観点がどうであろうと、私はこのような時間をこのように生き、これで良かったのです、という静かで毅然とした誇り高さがあります。これこそ英国紳士、孤高のイギリスの格好良さ! そして、このように時間の流れを重層化して捕らえ、記憶を把握していくことは、自分だけの世界を再構築することでもあります。それは異世界ファンタジーの構築にも似て、緻密で密やかな楽しみにも思えます。 プルーストの『失われた時を求めて』はそういう時間捕捉の代表格だと思いますが、なにぶん長くて長くて。長い物語が大好きな私も3巻ぐらいまでで魅惑的すぎる冗長な描写の海(何ともフランスらしい!)に溺れあっぷあっぷしていた頃に、この『日の名残り』を知人に紹介してもらいました。 ああ、これはとっつきやすく、また簡潔な語りが英国的でいいな、と思いました。 ちなみに、アメリカ的な時間捕捉と人生の振り返りとしては、私はフィッツジェラルドの「残り火」(『マイ・ロスト・シティー』収録)が思い浮かびます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 7, 2017 12:13:27 AM
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