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厳しくて荒々しいが均整のとれたきっぱりとした美しさの「冬」。ル=グインの作品はそんな雰囲気がします。『闇の左手』や『辺境の惑星』『オルシニア国物語』なんかのイメージですね。彼女の理知的で緻密な異世界創造も、浮わついたところや余計な装飾がなく、とぎすまされた「冬」のようなんです。
そこでは生と死、光と闇、地球と異星、私と異種(他人)などがくっきりと向かい合って、対立しつつも対になっている。その葛藤、理解への道のりの厳しさもまた「冬」。 もちろん、ファンタジーである「ゲド戦記」シリーズ(画像は『影とのたたかい』洋書版)はどちらかというと南国の海の香りがしますけれど、主人公ゲドの飾り気ない厳しい生涯と、世界の均衡という硬質な視点で描かれる魔法のあれこれは、やはり「冬」なのでした。 ゲド戦記で面白いのは、以前にも書きましたが、創造世界があまりにも整然としすぎて閉塞感がただよってくると、作者自身がそれを打破するものとして「竜」を登場させるように思われるところです。東洋的な思想にも詳しい作者は、西洋の邪悪で欲深なドラゴンとはちょっとちがう、人間界の外にある太初からの自然力の化身として竜を描いています。 そしてなお面白いのは、そうやって登場させた竜ですが、やはり作者はより大きな枠組みで、今度は竜と世界との均衡を保とうとする方向に、物語を進めていくのです。 SFでファンタジーをつくり,(昔風の言い方をすると)女性的なものをも男性的な理性でどこまでも表現しつづけた人、ではないかしら(私はル=グインの作品全部を読んではいないので、こんな結論を出していいのか分かりませんが)。 ご冥福をお祈りします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 2, 2018 09:00:55 PM
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