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テーマ:本日の1冊(3697)
カテゴリ:かるいノリで古典を
古代オリエントの伝説の英雄、ギルガメシュの物語。先月、文の里の古書店、居留守文庫で入手したちくま文庫『ギルガメシュ叙事詩』は、その全文(といっても、残っていて解読された部分)と解説、発掘や解読の歴史、くさび形文字の読み取り例まで載っている、盛りだくさんでお得な一冊です。
さらに、伝説に出てくる怪獣「天の牛」と星座の関係とか、ギルガメシュにも言い寄るオリエントの愛の女神イシュタルの冥界下りの伝説も収録。読者の好奇心をたっぷりと満たしてくれます。 ところで、本に埋もれたい方にはおすすめの、居留守文庫さんには、拙著『海鳴りの石』『天までひびけ! ぼくの太鼓』を委託しています! ギルガメシュの物語は、旧約聖書よりもギリシャ神話よりも古い、世界最古の英雄譚として有名で、美しい大型絵本(ルドミラ・ゼーマン『ギルガメシュ王物語』シリーズ)があるほか、私は私市保彦『幻想物語の文法-『ギルガメシュ』から『ゲド戦記』へ-』で、あらすじを知っていました。 ようやくその原本を読むことができて嬉しいです。 ギルガメシュは、もともとシュメール人の伝説の王だったそうですが、アッシリアだのバビロニアだの、古代オリエントを制した人々がこれを受け継ぎ、さらに西洋に伝えられるに及んで、さまざまなバージョンが作られたのです。しかもどれもこれも、破損していたり部分的に失われていたりします。 それらを照らし合わせて全体を復元しようという試みが、いかに大変で、しかし謎解きのわくわく感を刺激するものだったかは、復元された原文を見ると、わかります; ギルガメシュ〔 夜になると〔 彼が近づいて来ると 〔エンキドゥ〕は通りに立ちはだかった ギルガメシュが通るのを防ぐため 〔 〕の力によって --矢島文夫訳『ギルガメシュ叙事詩』第二の書板 などという調子です。〔 〕に言葉が補われていればまだ良し、抜けていたり、?がついていた り、「以下一七行欠」などとあったり。 それでも、半神半人の英雄の生涯がいきいきと見えてきます。 若いときのギルガメシュは不良青年のような乱暴者で、「父親に息子を残さぬ」「母親に娘を残さぬ」という暴君ぶり。ところが、野人エンキドゥと決闘をして引き分けると、彼と友達になったようで、一緒に杉(レバノン杉)の森に遠征して番人の獣フンババを倒します。 これによって、彼は一人前の英雄へと成長します。 するとすかさず、愛の女神イシュタルが英雄ギルガメシュに求愛しますが、彼は今までの女神の不誠実さを指摘してはねつけます。彼はもうすっかりクールな大人なのです。 イシュタルは逆ギレして「天の牛」を送りこみますが、ギルガメシュとエンキドゥのコンビは牛を倒し、人々はますます彼らをたたえます。 ところが、フンババや天の牛を殺したせいで神罰がくだり、エンキドゥは病で死にます。相棒の死に悲嘆にくれるギルガメシュは、不死の秘密を得ようと旅に出ます。探索行のすえ、大洪水を生き延びた老人(聖書のノアにあたる人)に教えられて、海底から不死の草を取ってくることに成功。 しかし、草を持って故国へ帰る途中、水浴びをしている隙に、蛇がこの草を食べてしまいます! かくして、ギルガメシュ(と人間)は不死にはなれませんでした。 そこでギルガメシュは坐って泣いた --第十一の書板 生者必滅の悲しみ。「坐って泣いた」は、この時代の叙事詩の定型表現のようですが、なかなか心に響く表現です。 と、こんなふうに、12枚の書板に人生とか人間の宿命とかが凝縮されているのが見事です(12枚めの書板は本編とは別バージョンのエンキドゥの死のいきさつだそうです)。 ところで、ちょうど「フェイト」というゲームをやっている娘が、キャラクターの一人、「ギルガメッシュ」を教えてくれました。赤と金色の優男で、もちろん出土した彫刻にある長いくるくるしたひげのおじさんとは大違い。 けれど、最初に書いたように、伝わっている伝説自体が、もとのシュメールの話を他の民族や後の人々が彼らなりに脚色したもの。ほんとうのギルガメシュ(実在したらしいですが)とは異なるところもあるでしょう。 そう思うと、現代こんな形で伝えられるギルガメシュもあっていいのかもしれないとも思います。フェイトのアーチャー「ギルガメッシュ」は、傲岸不遜な俺様ですが、やっぱり「エルキドゥ」と親友で、死に別れるとき悲嘆にくれるんだそうです。 他にも、ギルガメシュやメソポタミアの神々、幻獣は、多くのゲームに出てくるようです。その絢爛豪華なこと、夢解きが好きな古代人も夢にも思わなかったことでしょうね・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 26, 2018 08:13:32 PM
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