文春新書『英語学習の極意』著者サイト

さいきん、本業の仕事で疲れている。
タイ人とのつきあい、なんとむずかしいことか。
ちと愚痴なぞを。


わたし、中国についてよく辛口批評をしますよね。

で、中国人は×、タイ人は○、かというと、
いっしょに仕事をしてみると、そうはいかない。

タイ人と仕事をするのって、むずかしいです。


タイ人は、総じて仕事が丁寧。これはたしかです。

中国のみやげもの屋にあるような雑なものは、
タイのみやげもの屋にはまずありません。
この一点は評価してます。


でもね、
タイ人の場合、「強権発動でがんばらせる」ことが
なかなかできないのですよ。

きびしく要求を出すと、
中国人は「反発」というサインをくれるけど、
タイ人は、ただ「引いて」しまう。

「あほくさ。やってられるか」と静かに居直って、
沈黙のうちに スーーーッと引いちゃうんですよ。

このパターンは、中国にはなかったなぁ。
ほんとに参りました。


中国人や韓国人の場合、
帰属する組織系統から命令がくだると
とにかく出来ばえはどうあれ、命令どおりやる、
という思考回路が脳にしっかり埋め込まれているのですが、

タイ人の場合、
とくに知的労働にたずさわる人たちは、
転職の機会も豊富だし、そもそも豊かな国だし、
きりきりと胃に穴があくような思いで仕事をするなどという発想が
ないのですよ。


ああ、日本のメーカーの人たちがタイ人のことで嘆いていたのは、
こういうことなんだなぁ、と
しみじみ思います。

とにかく、
上司が担当者を厳しく指導して有無を言わさずに仕事をやらせる、
というような発想がタイ人にはないようなのです。

そんなことしたら、
担当者が「引いちゃう」か、「転職する」かして、
けっきょく何も進まないから。


かくして、工程管理がきわめてルーズ。

タイ人の担当者は趣味的に仕事を進められて、じつにしあわせでしょうが、
発注者たる日本人のわたしは、
仕事がなかなか進まないのを見ているだけで胃に穴が空きそうです。

Don't worry ないし マイペンライ（大丈夫）と言われるたびに、
「あ、これは There is something to worry about だ」と
いっそう心は暗くなる。


相手先のタイ人の副社長が曰く
「泉さん、あんたもタイ人になっちゃえばいいんだよ」。

そりゃそうでしょうよ。
わたしがタイ人なら、工程が遅れても言い訳してればいいんですから。

なんとか日本人であることを忘れず、
日本式の工程管理と品質管理を維持しようとするのですが、
ああ、
くるしい。