テーマ:中国&台湾(3304)
カテゴリ:ぼくの疑問符
4月18日の『中国時報』(台湾で一番売れている高級紙)の1面見出しに、「え?」と思った。
中国語と日本語の違い。 “韓裔生 校園大屠殺 33死26傷” 訳せば 「韓国出身学生 学園大虐殺 死亡33負傷26」 たぶん日本の新聞で「大虐殺」を見出しに使った一般紙は皆無だったのじゃなかろうか。台湾にいるのでよく分からないが。 ネットで見ると日本ではもっぱら「銃乱射」のようだけど。 『自由時報』4月18日号の2面見出しも “大殺戮 美校延誤示警2小時”(原文) 「大殺戮 米大学2時間遅れの警戒指示」(和訳) おそらく「大殺戮」も日本の一般紙は見出しに使ってないだろう。 タブロイド版夕刊紙では使ったかもしれないけど。 この“大屠殺”や“大殺戮”は、あくまで見出し用であって、 本文では “槍撃案”(“槍”=「銃」; “案”=「事件」) というのが使われている。 だからべつに『中国時報』が「大虐殺ぢゃ!」といって記事本文まで情緒的に染めているわけではないが、とにかく 中国語で“大屠殺”という単語をつかうためのハードルが 日本語で「大虐殺」をつかうためのハードルより低いことを知らされた。 いっぽう日本の記事本文で使われる「銃乱射事件」ですが、 「乱」の字はミスリーディング(=誤解をまねく)かもしれない。 「乱射」というと(たとえばマシンガンで)闇雲に撃ちまくる感じがするのだが、 今回の犯人は間を置きながら人を狙って撃ち、途中で弾をこめ直しては撃ち、ということで、 ニュアンスとしては「大量射殺事件」(これも一部で使われている)というのが当たっていると思う。 台北の現地スタッフに中国語では「乱射」は使わないのか? と訊いたら、 「“乱”+動詞という言い方は、口語的なので文章語としてはあまり使わない」と言われた。 “乱射”といえば「めった撃ち」という感じか。 4月17日の『聯合報』の1面見出しは “美校園濫射22死 史上最惨 維吉尼亜理工学院学生宿舎及教室遭掃射 一兇手已死” 「乱射」でなく“濫射”である。 「みだり撃ち」(という言い方はないが)ということ。 これなら当たっている。 こうなると、「濫用」を「乱用」と濫(みだ)りに書き換えさせた当用漢字制定時の施策を、また恨みたくなってくる。 濫りな書換えだったと思うが、 乱れはなかった。 むしろあまりに整然と適用されたからこそ迷惑だったのが、当用漢字表の存在だった。 「濫」と「乱」の差である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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