テーマ:美術館・博物館(1556)
カテゴリ:美術館・画廊メモ
すぐれた写実デッサン力をつちかった上で、
その偉大なる能力そのものは売り物にすることなく、 怪異な想像力と怪奇な発想力で勝負する超一流の画家ふたり @上野の森美術館。 展覧会初日の5月20日にさっそく行ってみたが、 会田 誠(あいだ・まこと)さん(42歳)の 美少女群像3部作(と呼んでよろしいのかどうか; 詳しくは後半で解説します)を見るだけも、 30分ものの劇をみたぐらいの あるいは思い切りレアの上質のステーキを平らげたときのような そんな満足感を味わえる。 (↓ 関連サイト) http://www.ueno-mori.org/special/aida_yamaguchi/summary.html http://wwwz.fujitv.co.jp/events/art-net/go/452.html じつは、展覧会に行った動機は 山口 晃(やまぐち・あきら)さん(38歳)の 大和絵ふうに近現代の日本を細密画で描きなおした作品群が見たかったからだった。 山口さんの、平安時代や江戸時代と現代が同居する不思議な細密画集を、書店で見た記憶があったのだ。 ちょうど『日本経済新聞』5月12日号33面の「アート探求」でも紹介があって、 ≪古今、自在に行き交う 異なる時代を合体≫。 まさしくこの見出しに集約される 1周か2周先を走っているような斬新なスタイル。 で、山口 晃作品はもちろん楽しめたのだが、 会田 誠作品のパワーに、きゅるきゅるかきまわされ、なでまわされつくした。 会田 誠さんの美少女群像3部作をひとつずつ解題(かいだい)すれば、 「大山椒魚」。 ちぶさがふくらみはじめようとする少女ふたりのヌード (加山又造の裸婦画のような、心がべつのところにとんでいる表情)。 いぼだらけの巨大なオオサンショウウオを枕にする図。 トリミングして、図録の表紙にも使われている。 単色画にすることで、あどけなさののこる女性の美しさが純に出た。 ここに怪異な大山椒魚をもってきて、 題材としては文字通り「エロ+グロ」だけど、 エログロとは別次元に浮かぶ作品になった。さすが。 「ジューサーミキサー」。 6年前にかかれた、いわば問題作で、 この作品の魔性は図録には収まりきらない。 心臓をわしづかみにする迫力を、縦2.9メートル、幅2.1メートルの実作で体験していただきたい。 数百体の“素材”としての微細な美少女たちが ジューサーミキサーいっぱいに注ぎ込まれて いままさにスイッチが入って、したのほうの美少女の鮮血が渦をまいて顕在化しはじめている無残絵、地獄図。 少女たちの虚無的な表情と、“素材”としての美しさ。 ありとあらゆる姿態。 今回の展覧会には出品されていないが、 会田 誠さんには「食用人造少女 美味(みみ)ちゃん」という蠱惑(こわく)的なデッサン作品群があって、 その延長線上にこの大作「ジューサーミキサー」がある。 3部作の3つ目は「滝の絵」。 今回の展覧会にあわせて制作された、縦4.2メートル、幅2.5メートルのアクリル画。 ちいさな滝がつらなる渓流に40名ほどの女子中学生たちが学校の水着姿で思い思いに遊んでいる絵。 (正確にいうと、うち2名はまだセーラー服姿で、さらに1名はセーラー服から水着に着替えようとしているところだけど。) 老人の性夢めいている。 ロリータ趣味とくくってしまってはつまらない。 ひとこまひとこまは健康・健全そのものの女子中学生たちなのに、 彼女たちが高密度に群がることが生む不思議な画像。 会田誠さんというのはつくづく才気にあふれた人で、 28歳のときに描いた18枚の「ポスター」連作にはうなった。 会場に収まりきらず、出口脇のいつも売店スペースになっているところを臨時の展示場にして展覧しているが、 小学1年生から中学3年生まで、それぞれの年齢の典型を再現しつつ (だから「パッと見」ではまるで正真正銘の児童画なのだ) しっかりとアイロニーの毒を注入してある。 会田 誠さんの最新作品集(税込み 5,040 円)の印刷が展覧会に間にあわず、 見本を置いて予約を受け付けていたので、さっそく申し込んだ。 きょうは鬼才に出会えた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
May 21, 2007 08:22:08 AM
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