香港藝術館 (Hong Kong Museum of Art) に週末に行った。
ペニンシュラ・ホテルの向かいにある。
「世紀先駆 林風眠藝術展」と題した回顧展をやっていた。
明治33年(1900年)に広東省梅県の貧しい家に生まれたのだが、
父が宝くじで大金を得たおかげでフランスへ留学して絵の勉強ができた。
残っている数少ない青春期の作品を見ると、棟方志功(むなかた・しこう)を思わせるふくよかな裸婦像を水彩画で描いている。
文化大革命のころは杭州にいて、
66歳の林風眠は自宅にもっていた過去の膨大な作品を、水になげうちドロドロにして水洗便器に流してしまう。
その心中や、いかばかりか。
だから、回顧展でも1950年代までの作品はほとんど展示されておらず、
「1960年代の作」と伝える質の悪い絵の具を使った女性画か、
1980年代以降の風景画、神話的な抽象画、なのである。
失われたものの多さを思わされた。
好みの問題だけれど、さほどの感銘を受けなかった。
(↓ 林風眠の典型。面長(おもなが)、かぎ眼(め)の女性画)
http://www.lcsd.gov.hk/CE/Museum/Arts/chinese/publications/cpublications_962-215-205-8.html
モディリアーニが、絹をまとった中国の舞姫を描けばこうなるかなというような作品。
この典型女性をひたすら描いている。
絵の具の質が悪く、色がくすみきっているし、保存が悪くて折り目がついているような作品も多い。
(↓ 赤壁の戦を題材にした「京劇」の抽象画; 色あざやかな静物画; 典型的女性像が庭にたたずむ図)
http://www.lcsd.gov.hk/CE/Museum/Arts/chinese/exhibitions/cexhibitions_s_20070401_1.html
さほどの独創性を感じることができなかった。
老年の作のいたいたしさ。
文化大革命で失われた作品を見てみたいという気持ちだけがつのる。
中国の藝術史を回顧する、金細工、玉器、陶磁器の常設展示は、制作技術の進歩のようすがよく分かる構成で、中国語・英語の2言語解説も充実していて気にいった。
そのほか
「不中不英 Chinglish」
と題したインスタレーション展があったりして、展示の幅広さは感じたが、
いまひとつ感動に火がつかなかったミュージアムだった。