スパイスをあまり使わない日本料理が素材勝負であるように、デザインや柄で勝負できない中東の単色の民族衣装も素材勝負ということなのか。
北陸の繊維業界が中東市場で活躍しているのだそうだ。 熱波の日々、なえさがる一方の政界を横目に、清涼感あるニュースだった。 8月16日の『北國新聞』(金沢市)社説から ―― ≪いいものは売れる 中東需要にわく繊維業界 やはりいいものをつくると売れるということか。北陸の繊維業界が、中東諸国向けの民族衣装の加工や生産で活気づいている。 ニーズの多様化に合わせて風合いや肌触りが異なる優れた生地を開発した実力の結果であり、ライバルの韓国、インドネシア、中国などを引き離しているといわれる。 もちろん、円安も追い風になっているのだが、それよりも北陸の高い技術が評価されたと考えたい。 たとえば、小松精練では「トーブ」と呼ばれる男性用の民族衣装の生地を中心に加工し、一昨年と比べ、35%増の加工体制を敷いている。 長年にわたって中東へ輸出してきたことも信頼につながっているが、同社では「白色」だけでも百三十種類も開発しており、こうした技術力は「白」へのこだわりがひときわ強い現地の人々から高く評価されているという。 現地では同社の偽ブランド製品も出回っているほどで、これは「メード・イン・ジャパン」の商品価値が広く知れ渡り、定着していることを物語っている。 色だけではない。同社では従来の合繊生地に加え、風合いや肌触りが異なるハイブリッド素材や綿素材の生地加工も開始している。 また、石川県内の繊維企業では女性向けの黒の民族衣装の素材も手がけている。 大量生産ではないが、これも「黒」の種類の豊かさや風合いの良さが求められる商品である。 一時は韓国や中国との価格競争に敗れ、中東向け民族衣装から撤退を余儀なくされた企業もあったが、いまはオイルマネーの恩恵で、値段は高くても着心地がよく、機能性の高い商品を選ぶ傾向が強まっている。 これは高品質を売りものにする石川の繊維産地にとっては歓迎すべきことであり、ニーズに合ったものをつくる技術の高さや、研究開発に一層磨きをかけたいものだ。 石川の繊維産地では、衣料で培った技術力を生かし、医療や工業用素材など非衣料分野に参入する「二刀流」の動きが広がっている。 だが、本来の衣料が好調であればこそ、業界にも元気が出る。中東で認められた技術の高さを、さらなる需要開拓につなげていきたい。≫ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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