中国語の単語には色々な名訳があって、挙げる例はひとによって異なる。
わたしに問われれば “可口可楽” みたいな誰でも知っているものは脇におき “猫臉花” と “長頸鹿” を挙げるだろう。 “猫臉花” の “臉” は 「顔」 のことだから 「ネコガオノハナ」 または 「ネコバナソウ」 とでも訳せるが、さて何でしょう。 じつは 「サンシキスミレ」 のことなのですねぇ。 そういわれてみると確かに猫の顔をしてると思いませんか。 “長頸鹿” は訳せば 「ナガクビジカ」 ですが、さて何でしょう。 「キリン」 のことなのです。たしかに長い首の鹿ですが、 キリンのことを 「鹿の一種」 とはこれっぽっちも認識していないものだから、むかし上海動物園ではじめて “長頸鹿” の看板を見たとき虚を突かれたような驚きを感じました。 台湾の新聞を読んでいると、最近の 「ワーキングプア」 は “窮忙族” と訳してありました。 まるで日本人が 「窮乏+族」 の 「乏」 の字を同音の 「忙」 に変えてシャレてみたかのようです。 北京語では “乏 (ファー)” と “忙 (マン)” は発音が違うので、シャレの意識はありません。 「サブプライムローン」 は “次級房貸”。 “次級” は 「B級」。 “房” は 「家屋」 で、“貸” は 「融資」。 つなげれば 「B級家屋融資」 です。 プロジェクトのための本格的な融資が成立する前の つなぎ融資のことを「ブリッジローン」 と言いますが、 さて中国語では “橋貸” とか “橋梁融資” とか言うのかなと思って香港人の融資担当者相手につかってみたら、さすがに通じなくて、“過渡性融資”だよ、と直されました。 いま話題の 「つなぎ法案」 は、共同通信の中国語訳では “過渡法案” となっています。 同じく共同通信の英文サイトをみると a stopgap bill とありました。「ギャップが出ないようにするための法案」。 満身創痍の国家にバンドエイドを貼るような痛々しさ。 海外取材番組で、アフリカの極貧国の子どもの目や負傷箇所に水分を求めて蝿がたかっている光景を見ることがありますが、さしずめ民主党はこの 「蝿」 ですな。 満身創痍の国家の傷にたからずとも、責任政党ならまず自分で井戸を掘れと言いたいのであります。 1月29日の 『北國新聞』(金沢市) のコラム 「時鐘(じしょう)」 は、 「つなぎ法案」 から郷土の詩人、室生犀星(むろう・さいせい) にもってきた。 さすがプロの技だ。わたしの到底およばぬ境地である。 ≪あの郵政民営化論議と同様、造反騒ぎまで出てきた暫定税率問題だが、税率維持の法案が年度内に成立しなかった場合を想定し、与党側が、とりあえず暫定税率を一時継続する「ブリッジ(つなぎ)法案」を提出する方向となってきた。 苦肉の策とはいえ、世の中には一本の通り道を渡すことで劇的に事態が好転する場合も多い。 金沢市の犀川大橋下流で、藩政期の幻の木橋を復活させる構想も、川の両岸を結ぶ新しい人の流れをつくると期待される。 防災や公共性の点で、許可を受けるまでの道は平坦でない。 しかし住民が主体となり、工事費に寄付金を募るというから、お役所も地元の熱意に一肌脱げないか。 犀川河畔で幼少を過ごした室生犀星の「性に眼覚める頃」に、朝の一番水をくみに川へ行くと、良質な水が後から後から流れてくるようで、幾度も手桶の水をくみかえたという清冽(せいれつ)な描写がある。 そんな犀星の世界をたどるためにも、雄渾(ゆうこん)なおとこ川の流れに木橋の情緒を加えたい。 構想を煮詰める中で地域の一体感も生まれた。 どこかの法案のような一時のつなぎでなく、既に両岸の住民の心の中に立派な橋はつながっている。≫ 『性に目覚める頃』は大正8年発表の短篇小説だ。そんなすがすがしい描写があったのか。 帰国したらさっそく読んでみたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jan 30, 2008 01:49:22 AM
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