カテゴリ:科学技術に驚く
あれは小学校の理科だったか、それとも中学校の化学だったか、教科書に出ていた実験がけっきょく実演されなかったのがいまだに残念だ。
木炭を太いガラス管に入れて下からアルコールランプで蒸し焼きにする。 すると、ガラス管の端からガスが出てくる。火がつく。 たぶん、木炭からしみ出るタールがガラス管にこびりついて、後始末がたいへんなのだろう。 それを大規模にやろうとしているのが、石炭ガス化だ。 石炭をそのままボイラーで燃やして蒸気をつくって蒸気タービンを回すのが従来の石炭発電。 新方式は、石炭を反応炉のなかでガス化して、そのガスを吹き入れてガスタービンを回し、余熱で蒸気をつくって蒸気タービンも回すという「1粒で2度おいしい」世界を目指している。 効率アップで、二酸化炭素排出が相対的には減る。 だから、先進国の発電プラントメーカーはこの「石炭ガス化複合発電」技術の実用化に全力を挙げている。 従来型の、石炭を微粉にしてボイラーで燃やすタイプの技術は、1世代前に開発研究が頂点に達してしまい、今では中国メーカーでも最高仕様のものが作れる(基幹部品は日本などから輸入するのだけどね)。 だから先進国メーカーは石炭ガス化複合発電に活路を求めている。 もちろん、それを売る我々の目も飛び出る高価なものだけど。 開発費用を回収しないといけないからね。 「石炭をガス化する」化学プラント的な新規部分がお高いのである。 日本経済新聞6月17日夕刊1面に、石炭を地中でガス化する次世代技術開発のことが報道されていて、発想の転換にあっと驚いた。 石炭というのは、確かに地中でも燃えるのである。 中国の山西省では、地表ちかくにある地下の石炭に火がついてくすぶり続け、これを消火することができず手がつけられない状態になっている地域があると、『ニューヨーク・タイムズ』紙で読んだことがある。 日経報道の次世代技術は、もっと深い地下にある石炭鉱脈に酸素を吹き込み不完全燃焼させ、水素と一酸化炭素などからなる燃焼ガスを発生させて取り出そうというもの。 石炭層の上下にある硬い岩盤が、天然の圧力容器となってくれる。 これには、うならされた。 ≪採掘した石炭をガス化する従来手法に比べ、初期投資は10分の1で済む。5年後をメドに実用化を目指す。≫ ≪地下深く採掘の難しい石炭を有効活用できる利点もある。≫ ≪2010年までに試験設備を国内の炭坑に設置し、実効性を確かめる計画で、利用価値の高い天然ガスや水素の割合を増やす技術を開発する。 地下水汚染や地盤沈下の防止技術も手がける。≫ 自分が商社にいるうちには商業化は間に合わないが、こういう未来技術の開発に一生懸命取り組む人たちの息づかいが聞こえるような気がして、わくわくさせられた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jun 19, 2008 07:46:11 PM
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