中古本を扱う店に、シュリンクパックに入ったままのハリー・ポッター本が何冊も、けっこうな値段で置いてあるのを見たときは、
「この中のいったい何冊が、まともな人による持ち込みだろう……」 と、気分が悪くなったものだ。 千円、2千円の本を万引きした犯人にウン万円の賠償をさせようとすると、「焼け太り」 だと言われぬか。 そういう懸念があれば、店はモノの被害額しか賠償請求できず、万引対策にカネをかけられない。 モノを返してペコンと頭を下げれば済んでしまうということになる。 ところが、思想を変えれば対策は生まれるものだ。 万引対策費のツケを実行犯に払わせるというもの。 これなら対策にカネと人手をかけることもできるし、万引への抑止力になる。 いいアイディア。全国展開すべきトレンドだ。 犯罪を小さなうちに摘み取り、抑止することは、つまるところ最も人道的な行為である。 『北國新聞』 社説 (平成21年2月12日) から: ≪◎万引犯に賠償請求 ルール浸透なら抑止力に 石川県や富山県など9府県でチェーン展開する大型ディスカウントストアが万引犯に対し、賠償請求を始めた。 万引犯の発見から警察署への引き渡し、被害届の提出、実況見分の立ち会いなど、従業員が万引被害の対応に費やした時間を時給換算し、実行犯に請求している。再犯がゼロとなり、万引被害が減る効果が出ているという。 窃盗は刑法犯全体の8割近くを占めるが、小額商品の万引などは店側が警察に通報しないケースが多い。 調書作成などに時間をとられるのを嫌うためだが、人件費相当分を請求できれば、被害届を出しやすくなる。 万引をすると必ず警察に通報され、経費を実費請求されるというルールが浸透すれば、相当な抑止力になるはずだ。 万引犯に対し、人件費相当の損害賠償を請求する動きは、書店を中心に全国的に広がり始めている。 換金目的のための万引が増え、検挙者の低年齢化、さらに高年齢化も目立っているためである。 賠償請求を始めたディスカウントストア 「プラント3」 の石川県内の2店は、半年間で万引犯50人に賠償請求し、回収率は84%、平均の請求額は5千円だった。 請求に応じない万引犯には督促状を送付し、2度の督促にも応じない場合は内容証明書付き郵便を発送した上で提訴する方針という。 富山県警と富山県万引防止対策協議会が一昨年実施したアンケート調査では、万引を 「絶対にやってはいけない」 という意識を持っている比率が小学生で97%、中学生で92%、高校生では89%と、徐々に下がっている。 成長するにつれて、「万引が見つかっても、たいしたことにはならない」 という悪しき知恵を身につけてしまうからだろう。 以前は窃盗罪に罰金刑がなく、懲役刑しかなかったため、万引犯は捕まっても不起訴や起訴猶予になるケースが多かったが、一昨年5月の改正刑法施行後は100円相当の商品の万引で罰金20万円の略式命令が出たケースもある。 万引に対して毅然と対処することによって、「謝れば済む」 という誤った風潮を一掃したい。≫ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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