カテゴリ:ことばと文字
きょう届いた、松山市の 愛光中学・高等学校 の季刊広報誌を開いたら、
「第11回俳句甲子園 全国大会準優勝」 がトップ記事。ことのほか嬉しかった。 昨年8月16~17日に四国の俳都で行われた恒例の全国イベントだ。 ぼくは最近いささか気持ちがひねて、故郷も母校も どうにでもなれという意識なのだが、5人の高2生たちが体じゅうで歓びを爆発させている写真を見、作品を読むうちに、無意識界からぐわぐわと膨れ上がってくるものがあって、鼻から目に涙が噴き出した。 優勝は開成高校だった。決勝まで勝ち進んだ愛光学園も立派だ。 愛光生たちの作品のうち3作が個人賞をもらった。 優秀賞の2作: 迷 ひ 猫 今 日 は 大 花 火 の 下 で 柴田悠貴 花火に 「迷い猫」 を配したのが絶妙。犬では、句にならない。 せっかくの花火を見ているのか見ていないのか、関心があるのか無いのかさっぱり分からないのが猫。 でも、じつはしっかり見ているのだ。 ただの猫ではなく 「迷ひ猫」 だというのがまた、いい。 なに食わぬ素振りでいても心は不安でいっぱいの猫ちゃんなのだ。 それが、今日は束(つか)の間の花火見物だ。 おそらく想像でつくった句だろうけれど、「今日(きょう)は」 のひとことでリアルさが増した。この辺が、うまい。 少 年 の 跣 足(はだし) に 銃 の 匂 ひあ り 高崎壮太 はっとさせる物語性。だが、映画広告のキャッチコピーのようでもある。 うまい句ではあるが落ち着きが悪いのは、「跣足」 と 「銃」 に連関が無さすぎるから。 銃は、手で扱うものだからね。 たとえば 「少 年 の 跣 足 火 薬 の 匂 ひ あ り」 と直したら、がぜん心の眼に乾燥しきった戦場が広がるのだが。 入選の1作: 東 京 の 仮 面 つ け た る 金 魚 か な 戸田圭輔 これは、俳味があって面白い。個人的には優秀賞の2作より、こちらを推す。 「東京の仮面」 というのが、想像の翼をさっと広げさせてくれるではないか。 そこに、「金魚」 と来た。 人を食っているところが、気に入った。 残る2人の作品: 夏 草 に 金 色 の 獅 子 眠 り た る 野口 航 「金色の獅子」 のイメージが鮮烈。アンリ・ルソーの絵画を思わせる。 だからどうしたと問われたとき、答が弱すぎるのが難点だろうか。 「眠りたる」 ではなく、次の動きを何か予感させるものがあれば、もっとよかった。 夏 草 や ほ う き の バ ッ ト 空(くう) を 切 る 二神(ふたがみ)雄揮 うん、真剣にハチャメチャなのが、いい。 「夏草や」 で切れは得ているから、句末は 「空を切る」 でなく 「空を切り」 として、時間の経過感をもたせてみたい。 * 同じ広報誌には、「子規顕彰松山市小中高校生俳句大会」 の入賞作として中1生の6句が載っている。 うち、特選の句ふたつが良かった: 教 科 書 が 腕 に 吸 い つ く 暑 さ か な 田坂京太郎 状況をすぱっと切り取った。学校生活の句にして絶妙。 あんまりうまいので、いささかの類想感 (似た発想の句がありそうな感じ) があるほどだ。 エアコン完備の世に慣れて、「教科書が腕に吸いつく」 感触をなつかしく思い出す自分に気づく。 家 中 の 団 扇 並 べ て 選 び け り 合田昇平 これは楽しい。 一読、心の眼に色とりどりの団扇が集う。 夏祭りに、どの団扇を挿して行こうかと、家族でわいわい話しているのだろう。 そういえば奥の部屋にもひとついいのがあったよ、などと話が広がるのだ。 ことばを紡ぐよろこびを知った少年少女らに、幸あれ。 ちなみに愛光学園は、わたしが通った頃は男子校だったが、いまは共学校になっている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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