テーマ:政治について(20092)
カテゴリ:日本の政治
民主党が政権を取っても、日米安保体制が根本から変わることはなく、殻に閉じこもって議論を拒否し、防衛関連の新たな法案は一切出さないことでどこまで国政がもつか、生体実験ならぬ“政体実験”することに終始するだろう。
ところが、思わぬかたちで弱者にしわ寄せが来る法案が通される現実的可能性があるという良い例を見つけた。 社民党・国民新党におもねり、人材派遣会社という業態を崩壊させる法案が通ってしまう可能性だ。 詳しくは、下に転載する 『日本経済新聞』 6月24日のコラム 「大機小機」 をお読みいただきたい。 人材派遣会社という業態が崩壊すると、いま人材派遣会社でもって雇用を確保している人が正社員になれるハッピーな世の中になります、と社民党や国民新党が本気で思っているとしたら大バカだ。 企業が勤労者を30代や40代で正社員として中途採用するとき、大卒新人の給与レベルでというわけにはいかず、年齢相応の給与を支払うのが一般的だ。 だから、それに見合ったスキルがあると見なされる者だけが、中途採用の狭き門をくぐる。 人材派遣会社がなくなると、人材派遣会社を通じて何とか職を得ていた人々のうちスキルの乏しい人 (=社民党や国民新党が考える 「弱者」 ) は雇用を完璧に失う。 大卒新人にとっては有利だろう。 今まで人材派遣会社がまかなっていた労働力を、安い若手の労働で穴埋めするべく、新卒採用が増えることが予想されるからだ。 人材派遣会社は、派遣する前にコンピューターの使い方や会社生活の常識などを必要に応じて講習させることが通例だ。 その意味で、雇用促進の研修機関としての役割も果たしている。 社会の必要が生んだ業態を、狭い見識に基づく政治がつぶしかねない好例(?)だ。 コラム 「大機小機」 『日本経済新聞』 平成21年6月24日19面 ≪民主党の派遣禁止法案 民主・社民・国民新の野党3党が、派遣への大幅な規制強化を盛り込んだ派遣法改正案を、衆議院に提出することで合意したと報じられた。 製造業への派遣は専門的な職種以外は原則禁止、それ以外の派遣は派遣会社の正社員 (常用型) に限定という内容のようだ。 自民党が多数を占める衆議院で否決されるという前提で提出するなら危険な賭けである。 民主党が政権を取った後も自らを拘束するからだ。 派遣のような不安定な働き方はないほうが良く、規制は派遣労働者のためだといわれる。 だがこうした考えは、派遣の働き方で満足している約半分の労働者にとって迷惑である。 残りの不本意な派遣労働者にとっても、より良い職が見つかる保証は全くない。 このような極端な内容の法案はもともと民主党の考え方ではない。 派遣の全面禁止を求めた社民・国民新の共同提案を民主党が選挙協力のために丸のみした結果といえる。 国民新党と社民党は本来、水と油のように考え方が異なっているが、「反市場主義」という点で奇妙な一致があるのではないか。 当初、この共同提案に対して民主党は (1) 仮に登録型派遣社員の全員に常用雇用を強制すれば、派遣先が見つからないときも派遣会社は給料を払わなければならず、経営が成り立たない。 (2) 少なくとも84万人、登録者も含めれば、最大限151万人が失業するリスクがある ――と批判していた。 これは当然の論理だ。 しかし小沢一郎流の「選挙が第一」という戦術の下では、民主党の良識は吹き飛ばされてしまったようだ。 これに限らず、労働分野では規制強化が進んでいる。 工場などで請負労働者に少しでも指示をすれば、偽装請負と糾弾される。 また、指示可能な派遣に切り替えれば3年間で雇用の申し込み義務がある。 さらに、直接雇用しても、今後は、終身雇用が原則で、正当な理由がなければ雇用期間を限定できないという民主党案が控えている。 こうした一連の動きは、現在1,700万人の非正社員を、すべて雇用保障のある正社員にすることを目指しているかのようである。 しかし企業が大部分の社員に終身雇用を約束できたのは、過去の高い経済成長という恵まれた環境によるものであった。 景気変動にさらされる現在の状況下では、製造業は弾力的な海外の労働市場に競って避難するしかなくなる。 (吾妻橋)≫ 人材派遣会社が登録型派遣社員の全員を常時雇用しなければならなくなれば、人材派遣会社はその原資を確保するために、企業からもらう派遣料を引き上げざるをえなくなる。 それなら、企業みずから勤労者を常時雇用したほうがマシだ、という判断が、当然でてくるだろう。 ないしは、派遣社員の受領する所得レベルを下げるしかないが、まぁ、そういう帰結をまねくのが、社民党・国民新党とそれにおもねる民主党の政策だということだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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