テーマ:政治について(20101)
カテゴリ:日本の政治
「新しい歴史教科書をつくる会」 が編集・出版を推進した 『新編 新しい歴史教科書』 (自由社・刊) が、横浜市の約半数の中学校で使われることになった。
8月4日の横浜市教育委員会の会議で決まった。 おめでとうございます。 横浜市18区のうち8区 (青葉区、旭区、金沢区、港北区、港南区、瀬谷区、緑区、都筑区) で採択。 横浜市の中学生は1学年 約2万4千名いて、うち採択8区にある中学校が71校、1学年 約1万3千人という。 (「つくる会 FAX 通信」から) この教科書については、7月の配信コラムで2度取り上げた。 7月7日付の前篇 では、文化の香り高く、その時代時代の人びとのふつうの生活に目を向けようとする視点を評価した。 7月31日付の後篇 では、昭和前期が戦争史にあまりに重きを置きすぎていることと、戦後史の扱いが不足していることを批判した。 批判したのは、丁寧に批判するに値する立派な教科書だから。 採択を決めた横浜市教育委員会はさすがだ。 8月5日付の『毎日新聞』の神奈川県地方版 によると、さっそく 「子どもと教科書全国ネット21」 という団体が 「植民地支配を美化し、日本の戦争の加害や被害をほとんど書いていない。採択の撤回・やり直しを求める」 と抗議声明を発表したそうだ。 教科書の実物を収録した 『日本人の歴史教科書』 (自由社・刊) を読めば、「植民地支配を美化し、日本の戦争の加害や被害をほとんど書いていない」 という運動家らの主張が嘘だと すぐ分かるのだが。 むしろ、そういう為にする批判に備えて、昭和前期の異民族統治および戦争の負の側面は、しつこいほど繰り返し言及がある。 * 毎日新聞報道を読むと、じつは 「つくる会」 の教科書は横浜市18区のうち16区で採択されていてもおかしくなかったことが分かる。 同紙によれば、区ごとの採択結果は、こうだった: ≪◆市教委の教科書採択結果◆ <自由社が投票で多数> (8区) 港南、金沢、港北、緑、青葉、都筑、旭、瀬谷 <投票同数で今田委員長が他社に決定> (8区) 神奈川、西、中、南、磯子、戸塚、栄、泉 <他社が投票で多数> (2区) 鶴見、保土ケ谷≫ 投票同数の8区で、今田委員長があえて他社本を採択することにしたのは、採択が 「騒ぎ」 にならぬようにとの政治的判断だろう。 じつは今田委員長自身は、「つくる会」 の教科書を高く評価している人なのだ。 毎日新聞の記事から引用すると ≪今田委員長は審議の中で自由社版を 「非常に理解しやすく、日露戦争も愛情を持って書いている」 と称賛。 委員会後の会見では 「戦争賛美、植民地の正当化など、そういうふうには読めなかった」 と述べた。 田村幸久教育長は会見で 「横浜の子どもが使うにふさわしい教科書か真剣に議論してきた。合議制の結果、適正な手続きを踏んでいる」 と強調した。≫ 投票同数の場合は、従来と同じ帝国書院か東京書籍の教科書を採択だ。 ここで今田委員長が 「つくる会」 の教科書を選ぶこともできたが、それをやったら反対運動家らが かえって元気づく。 今田委員長があえて自論を殺したのは、他の地域での採択の円滑を祈ってのことだろう。 * 所詮は毎日新聞だから、次のような匿名教師の談話も いそいそと載せてある。 ≪一方、自由社の教科書採択が決まった青葉区の中学教諭は 「今までと異なる歴史観の教科書を使う不安感はある。 生徒への影響も大きいと思うが、制度にのっとっているので大幅に逸脱することもできない。 扱いは難しい。教える側の力量が問われる」 と話した。≫ まさに毎日新聞記者が欲しがるような談話。 ワンパターンだから、わたしなら居眠りしながらでも書ける。 かくして、記事の見出しは ≪教科書問題: 自由社の教科書、横浜で全国初採択 「扱い難しい」 と現場困惑≫ いきなり 教科書「問題」と呼ぶあたりから、根性がゆがんでいる。さすが毎日新聞だ。 たかだか匿名教師ひとりの談話で 「現場困惑」 と見出しを打っているが、この匿名教師どのは実在しないのではないか。 日本の新聞記事では、あるていどの長さの談話を載せるとき、匿名の場合は年齢を書くものだ。 記事には、それがない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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