けさ3日のフジテレビ 「とくダネ!」 に民主党議員で高速道路無料化の論客という御仁が、小倉智昭&カンパニーに囲まれていた。
最初は民主党への突っ込みで始まった。
アンケート結果では、高速道路無料化に賛成する人は全体の2割しかいない、と。
(そりゃ、そうだろう。
ぼくのだいじなアシスタントも、公共交通機関をほとんど使わずもっぱら車をつかうひとだが、
「高速道路料金が1,000円でも大渋滞なのに、無料化したらどうなるかと思うとゾッとするわ。
泉さん、お願いだから、民主党に抗議する本を書いて!」
と訴える目はほとんど涙目だった。)
「とくダネ!」 ではそのあと、高速道路料金1,000円化のおかげで客が3割減った東京湾横断フェリーの経営者が映り、
「高速道路が無料というなら、わたくしどもフェリーも無料にできるよう、政府に予算を組んでもらいたい」
と、真剣な顔で冗談を言っていた。
そこで、民主党議員の登場である。
フジ 「現在、高速道路料金による収入は2兆4千億円で、そのうち5千億円が道路の維持のための諸経費、そして1兆9千億円が建設資金の返済に充てられています。
道路料金を無料にしたら、どうやってこのおカネを調達するのでしょうか?」
民主 「あのですね、最初に申し上げておきますと、1兆9千億円が建設資金の返済に充てられているとおっしゃいましたが、そうじゃないんですね。
返済に充てられているのは9千億円です。45年間かけて返済することになっていますから。
残りの1兆円は、新規の高速道路の建設資金に充てられます。それを止めようということなんですね」
フジ 「受益者負担が当然だという声がありますが」
民主 「高速道路は国民全体の経済に寄与していますから、国民全体のためになっているわけです。
だから、その建設資金を国民全体が負担するんだ、ということなんです」
フジ 「鉄道やフェリーなど、高速道路料金を下げただけで経営に影響している交通機関もあるんですが、どうなんですか」
民主 「だからそのために、職を失った人たちとかのための政策もきちっとやっていこうということなんですよ」
フジ 「高速道路料金を1,000円にしただけでも大渋滞ですが、無料化したらどうなるんですか」
民主 「いまは料金を下げるのが週末だけだから集中してしまうわけで、毎日無料ということにすれば全体にばらけますから、それほど混まないと思います」
フジ 「ああ、なるほどね。どうもありがとうございました」
録音したわけではないので 「文責は泉にあり」 だけれど、話の流れは上記のとおり。
いちおうフジの若手アナウンサー氏も突っ込んではいるが、民主党議員の言い分に小倉智昭チームがいちいち 「なるほど!」 と うなずく姿をカメラがとらえる。
議員のはぐらかし発言への厳しい突っ込みは一切なかった。
印象としては、反対論をいろいろ民主党議員にぶつけたけれど、全部撥ね返されて終わっちゃいました、というところ。
そもそも、あわただしい朝のワイドショーで短時間の枠で取り上げるには無理がある話題だが、不完全燃焼も甚だしく、気分が悪くなった。
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財源論のところは、議員は完全なはぐらかし。
建設費の返済と道路の維持費をどう捻出するのか、「国民全体が負担」 というだけで具体的な答えはなかった。
受益者負担という常識への反論も詭弁。
「国民全体のため」 が錦の御旗なら、国民文化の向上のために全国の劇場や映画館の料金も無料にして政府の補助金でまかなえばよかろう、ということになる。
(もちろん、そんなことをしたら、帝劇も TOHOシネマも有象無象(うぞうむぞう)の人であふれて大層居づらいところになるだろう。
演劇・映画好きなら、そんなクレージーなことは決して望まない。)
鉄道やフェリーなどの公共交通機関の経営への悪影響の懸念に対して、唐突に
「失業対策もしっかりやるから大丈夫」
とは、語るに落ちるもいいところ。
公共交通機関は衰退してもよいと本気で考えているらしい。
週末だけではなく毎日無料にしたら、週末の車の集中がなくなってさほど大渋滞ではなくなります、という論法もお粗末。
毎日無料にしたら、人の流れそのものが公共交通機関から離れた形で定着してしまうから、これは相当に危険だ。
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最終的には、「毎日無料化」 されるのはもともと走行量の少なかった辺鄙な路線に限定されるだろうと希望する。
もともと有料を前提にした走行量を想定して建設した道路なのだから、想定外の無料化をやったら悲劇になるのが道理。
わたしは小沢民主党に 「マニフェストの約束どおりやれるものならやってみろ」 などと、意地悪を言うつもりはないのである。
もともと小沢一郎氏のことは信用していないし、マニフェストも信用していない。
つまらない意地を張らずにゼロベースで議論に応じるだけの真の勇気をもってほしいものだ。