テーマ:ベトナム好き集まれ(2243)
カテゴリ:越南のオモチャ箱
11月21日の日本経済新聞の1面左隅と13面(企業面)に、住友商事がベトナム企業と共同出資してベトナム南部で大型石炭焚火力発電所を建設する計画が報じられた。
ハノイの岩本陽一記者の報道記事だが、商社の口車に乗って不見識なことを2つ書いている。 13面で打った見出しに端的に表れている。 ≪ベトナムで発電所建設 住商、「環境」で開拓 グループ企業の力も強み≫ 何が「環境」なのかといえば、熱効率の高い「超臨界圧」の火力プラントを採用することで二酸化炭素の排出量を抑えるから、ということなのだが、 こういう一般大衆を惑わせる企業広報垂れ流しは、願い下げにしたい。 火力発電システムは、蒸気の温度・圧力を上げるほど効率がよくなる。 温度・圧力の向上は、配管の材質の改良など様々な技術の結晶だ。 「亜臨界圧」、「超臨界圧」、「超々臨界圧」 と、熱効率は上がってゆく。 で、この 「超臨界圧」 だが、日経記事はこれをあたかも新技術のように書いて、記事の目玉にしている。 「超」の字に躍らされているが、「超特急」も半世紀ちかく前からある。 「超臨界圧」 の火力発電は、1970年代からある技術で、日本ではこれを採用するのが常識だし、中国企業もこれを採用してプラントを製造している。 特別なことは何もない、ふつうの技術なのである。 日経記事では ≪熱効率が高い 「超臨界型」 の石炭火力発電所を建設し……≫ などと、 「超臨界型」 という言い方がされているが、これも誤り。 圧力が臨界を超えている、というのがポイントだから、「圧」の字を落としてはいけない。 “超臨界型” をグーグル検索しても、270件しか出てこない。 その4~8件目は、まさにこの日経記事の誤記を引用したものだ。 * もう1つの不見識は、以下の箇所。 ≪「超臨界型」の石炭火力発電所の心臓部分であるボイラーの部材を製造できるのは、世界で住友金属工業など数社とされる。 住商はグループ企業とのつながりを武器に、発電プロジェクトを環境関連事業のひとつとして強化する。≫ ボイラーの部材を製造できる金属メーカーをグループに持たなければ、超臨界圧発電プラント建設のための投資ができない、などということがあるだろうか。 同じ流儀で意地悪くいえば、住友グループにはそもそもボイラーやタービンを作るメーカーがないから、住友商事は火力発電に事業投資しようとしても不利な立場にある、ということにならないか。 実際にはそんなことはないのであって、発電事業への投資においてグループ企業にメーカーがいるかどうかは全く関係ない。 投資者としての住商、プラントの売り子としての住商が、住友金属工業から直接に部材を調達するわけではない。 他案件の分もふくめて部材を一括調達するのは、住友グループではないボイラーメーカーである。 経済社会がそもそもどういうふうに動いているか、よく理解せずに書いた上滑りの記事。 今年の日経記事のワースト10に入るのではないか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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