テーマ:政治について(20114)
カテゴリ:科学技術に驚く
スーパーコンピューターは、そもそも何の役に立つのか。
計算能力が高いコンピューターを使うと、製品開発するときに高度のシミュレーションが短時間でできるので産業を大いに支援でき、有効活用すれば国全体の経済が潤う。 そのあたりをもっとうまくPRすればいいのだが。 財務省の緊縮財政主義者の代理人らが予算縮減と “仕分け” したが、12月10日の日経1面報道を読むと、政府の総合科学技術会議では次世代スーパーコンピューター開発事業を 「確実に推進すべきだ」 と位置づけられた。 わたしが読んでためになったのは、次の記事。教えられることが多かった。 科学技術開発が、つまるところ 「ひと」 への投資であるところもポイントだ。 『日経産業新聞』平成21年12月9日、11面 ≪迷走する次世代スパコン開発(中)「競争力失う」広がる困惑――影響、ソフトにも 「まさか凍結とは」。 11月13日、次世代スーパーコンピューター (スパコン) 開発の事業仕分け作業の様子をネット中継で見ていた東京大学生産技術研究所の加藤千幸教授は耳を疑った。 産業界向けのシミュレーションソフトウエアの研究開発を進めるが、 「このまま凍結されると企業に開発中のソフトウエアを渡せない」 と危機感を募らせた。 加藤教授らは、国が計画する次世代スパコン向けに車体や車両の開発用シミュレーション (模擬実験) ソフトを、自動車メーカーや鉄道会社などと共同で開発中だ。 「苦境に立つ日本の製造業にとって、(試作しないと性能が分からない) 最先端製品の開発では、ペタ級マシンで動くシミュレーションソフトは大いに役立つのに」 と加藤教授は悔しそうに話す。 円高やコスト競争が激しさを増す中、製造業では数値シミュレーションを使って試作品を減らし製品開発の期間を短縮する動きが急速に広がる。 発電所向けタービンなどの開発でソフトを利用する三菱重工業の青木素直副社長は 「アジア諸国などの低コストな製品に対抗するにはシミュレーションは欠かせない」 と強調する。 主に毎秒1テラ (テラは1兆) 回を超える計算能力を持つスパコンだが、毎秒1ペタ (ペタは1千兆) 回以上の超高速スパコンによるシミュレーションは従来に比べて精度が上がり試作品を作る回数が大幅に減らせるという。 半導体開発では手間やコストがかかる試作品を作らずスパコンでのシミュレーションに依存する傾向が強い。 世界の半導体メーカーなどが使う年間の研究開発費は約5兆円だが、シミュレーションを採用すれば4割削減できるとの試算もある。 ただ現在、国内の製造業企業が利用するシミュレーションソフトのほとんどは欧米製。まだ超高速スパコンで使えるソフトは世界中に存在しないが、 「欧米のソフト開発を待っていたら、企業は競争力を失う」 と加藤教授は指摘する。 このため、次世代スパコン開発計画はスパコン本体とソフトウエアの開発を同時進行で進めてきた。 文部科学省は開発が始まった2006年度から今年度までにソフトの研究・開発に約70億円を計上、計算機が稼働する2012年度まで合計 100億円を投入する計画だ。 ソフト開発費はほとんどが人件費。 次世代スパコン開発が凍結されれば直接雇用される研究者 300人弱が失業し、1千人規模の研究者の研究費がなくなる。 日本のソフト開発が巻き返す機会を失いかねない。 ただ、次世代スパコンが利用できるかどうか疑問視する声は産業界にある。これまで政府が作ったスパコンでは民間企業がうまく活用できていないからだ。 かつて世界最速だった海洋研究開発機構の 「地球シミュレータ」 も地球温暖化の長期予測計算などで成果を上げてきたが、 「フルに動かした研究テーマは気候変動と地球内部を調べる2テーマだけ」 と、同機構にいた佐藤哲也兵庫県立大学教授は振り返る。 ソフトなどが特殊で企業には使いにくかったという。 ある素材メーカーの担当者は 「地球シミュレータの完成時も企業はなかなか手が出せなかった。 ペタ級のスパコンを企業が開発に使いこなすには相当の訓練と、知財や契約の面で使いやすい仕組みが必要」 とこぼす。 日本国内にあるスパコンで世界 500 以内に入るのは16台。高性能スパコンを使える大学や企業は少ない。 次世代スパコンの計算速度は地球シミュレータを 100倍近く上回る。 理化学研究所の次世代スーパーコンピュータ開発実施本部の平尾公彦副本部長は 「最先端のデバイスや創薬、材料開発など産業界にも十分に活用してもらえる仕組みを作りたい」 と民間への活用を促す考えだ。 巨額の予算を投入して開発する次世代スパコン。 十分な成果を出すシナリオ作りにも国民の厳しい視線が注がれている。≫ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Dec 11, 2009 08:33:08 AM
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