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May 29, 2010
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カテゴリ:美術館・画廊メモ
丸の内の行幸(みゆき)地下ギャラリーで4月29日~5月30日開催の 「アートアワードトーキョー丸の内2010」 を今頃になって見たが、賞の審査結果にとうてい承服できない。

もしわたしが主催者なら、来年は審査員を総入替えしたいくらいだ。

イベント企画じたいはすばらしい。
美大の卒業制作展からの選抜展。45名の若い才能を世に出して、力づける。

会場は、東京駅から皇居へ一直線に伸びる行幸通りの地下だ。
丸の内の死角のような場所で人通りは少ないが、この通路の両側をギャラリーに仕立てたのは、イキな知恵。



グランプリ賞は、ビデオ作品だった。

ネット上で作家が見つけた他人の自己紹介ビデオクリップの声色を、作家がそっくり真似て演じたビデオが次々に流れる。
それだけ。

表情や身振りにさほどの細工もなければ、背景や映像処理に意匠を凝らしたわけでもない。
単なる声帯模写の記録である。

その瞬間藝のほどは多とするが、声帯模写ビデオに対してアートイベントのグランプリ賞とは、審査員諸君、貴兄らは正気か? 演藝イベントじゃあるまいし!

百歩譲って、真似ぶりのおかしみを鑑賞できる多重音声・複数映像の編集の工夫があれば、そこを買う手はある。
だが、受賞作にはそんな工夫はなかった。

同じくビデオで、3面のスクリーンをつかって目、鼻、口のアップ画像を延々と流す作品に、国立国際美術館主任研究員の植松由佳さんが審査員賞を出している。

退屈。あと、ふた工夫くらいほしい作品。ビデオ作品の評価ハードルがあまりに低い。



準グランプリ賞は、灰紫色を基調とした油画。
これまた、準グランプリ賞を与えた判断根拠が理解できない。

審美に向かわぬ汚い色。さして丁寧な仕事というわけでもない。メッセージ性も不明確。ヘタウマ、でさえない。

同傾向の絵なら、むしろ大林丘奈(たかな)さんの作品のほうが、色彩も美しく、読み解きの楽しみも与えてくれる。
ところがその大林丘奈さんへは、審査員賞もなかった。

多摩美のデザイン学科准教授の佐藤直樹さんが審査員賞を出した作品も、灰色に混濁する油絵具が渦巻く、きたない絵。
準グランプリ賞と同様、取り柄が不明なのである。



審査員賞で順当なのは、枝 史織(えだ・しおり)さんの4連作。
横浜美術館主席学藝員の天野太郎さんが審査員賞を出した。

「舞台」 「ダム」 「競馬場」 「プール」。
非現実空間が、あたかもジオラマを見ているような二次的なリアルさで迫ってくる。絵画の楽しさを味わった。


明治大学特任准教授の小山登美夫さんが審査員賞を出した、佐藤 翠(みどり)さんの作品もいい。欲しくなった作品のひとつ。

Sex And The City を彷彿とさせる華麗なワードローブが、軽妙なタッチで丁寧に描き込まれた大作。
色彩に調和があり、いつまで見ていても飽きない。

上半分は写実しながら、下の床部分は思い切って墨流しのような夢幻処理。この辺の組合せも巧みだ。



受賞しなかった作品の内でわたしが高く評価するひとつが、宮本 宗(ひろむ)さんのオブジェ。

上半身が錆びた煙突で下半身が裸身、といった物体と人体の組合せ。
丁寧に、リアルに作り込まれているから、見飽きない。

人間が営々と建造するモノたちが やがて行き着く哀感を、下半分を人体にすることでうまく表現してみせた。


榊 貴美(さかき・きみ)さんのは、高橋龍太郎コレクションに直行しそうな逸品。

一群の真紅のワンピースの少女たちがサングラス組と無邪気組に分かれ、そして無邪気組はにこにこしながら顔の見えない少女たちを生き埋めにしている。

校庭の白線は不思議な白い粘液で引かれている。
道具の実物もどきをオブジェとして絵の前にあれこれ並べて、非現実世界をリアルに演出したのもおもしろい。


増田恵助(けいすけ)さんの人物デッサンも、描く人物のファッションが個性的。
色クリップをつかって作品を固定してあるかのような額装も、おしゃれ。

増田さんには、いつか人物画を注文してみたいと思った。



こうしてみると、審査員諸氏とわたしは随分と判断が異なる。
当たり前の話ですが、わたしは自分の審美眼のほうが上だと思っております。





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最終更新日  May 29, 2010 09:19:30 PM
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