カテゴリ:美術館・画廊メモ
出光美術館などで陶磁器を見るのは好きだが、焼き物への関心は絵画に対するほどではない。
というか、器の名品を見ても図柄や彩色にまず目が行く。要は絵付けの美を鑑賞しているわけである。 ならば、窯で焼いたものを見るまでもなく、屏風をたんと楽しみなされ。 ルーシー・リー展は名品ぞろいと想像しつつ、何となく躊躇していたのは、そのせいだ。 八重洲二丁目の画廊 T-BOX に行ったらビラが貼ってあったので、 「行こうかどうしようか、迷ってるんですよ」 と言ったら、オーナーの高橋盛夫さんが 「ぜひお行きなさい。自分は画廊の留守番でどうしても時間が取れないが」 とおっしゃる。 6月4日に国立新美術館に行って、ルーシー・リーの釉薬調合への飽くなき挑戦を目(ま)の当たりにして、すがすがしさで満たされた。 挑戦心こそ青春。青春を片時も離れることなく、自らのセンスを形と線で表出しつづけたひと、ルーシー・リー。 え? と思われるだろうが、ルーシーのウィーン修行時代の虹のようにカラフルな鉢が、ぼくはいちばん好きだ。たぶんそれが最も絵画的だからだろう。 ウェッジウッド社のために作ったジャスパーウェアのコーヒーカップのモデルも興味深かった。 けっきょく商品化は見送られたが、ルーシー・リーが終生身近に飾っていたという。 6月5日、高橋盛夫さんに、採用されなかったウェッジウッドモデルの話をしたら 「きっとどこかに商品化には適さない何らかのゆがみの要素があったのでしょう。そしてそれこそが彼女の藝術の所以(ゆえん)だったのにちがいない」 と推測していた。 展覧会へと背中を押してくれた高橋さんに、お礼にルーシー・リー展の図録を差し上げた。 * 展覧会を見てから3階のレストランで食事した。開催中のオルセー展記念のメニューをたのんでみた。 前菜のシーフードは、見かけは蒸し物のようだが網焼きの味がして、浅蜊をベースにしたソースをあわ立てたという海潮音の演出も楽しい。 主菜の鴨のモモ肉は窯(かま)で焼かれてほろほろ。 左上には白隠元豆のピューレにトマトピューレを配し、太陽のよう。 表皮と肉の異なる食感に、ピューレのさまざまなコンビネーションを掛け合わせると、変化たっぷりに大振りのモモ肉がぺろりと入ってしまう。 南仏の白隠元豆の煮込みがロートレックの好物のひとつだったそうだ。 右下の卵のようなのは 「蜂蜜のアイスクリーム」 だと言われたが、肉桂なのか、なにかスパイシーで、いけた。あとで読んだら、あれは生姜の風味だったらしい。 この3品で 5,800円。赤ワイン250 ml が 1,000円。展覧会チケットを見せると1割引だから、これはかなりオトクです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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