テーマ:中国&台湾(3305)
カテゴリ:台湾の玉石混淆
中国と台湾が6月29日に “両岸経済合作架構協議” (Economic Cooperation Framework Agreement, ECFA) に調印した。(中国語の “協議 (シエ・イー)” は、 「合意 (の覚書)」 という意味でよく使われる。)
当事者どうしは 「両国間」 という表現を使えない両国だから、こういうとき中国語では “両岸” と呼ぶことで議論を避ける。 日本語では 「中台経済協力枠組協定」 ということになろう。 かなわぬ理想を言うならば、台湾はASEANに加盟して、まず東南アジア諸国との間で自由貿易を享受するというのが、あるべき姿だと思う。 中国との関税撤廃等の新たな枠組みも、台湾がASEANの一加盟国として中国・ASEAN間の包括的な交渉のなかで決めてゆく。そんな世界が、わたしの思い描く理想だ。 これがなぜ不可能なのか、台北駐日経済文化代表処 (=駐日台湾大使館) のサイトに解説がある。 両岸経済協力枠組み協議 (ECFA) に関するQ&A (定義、内容) 2009年4月9日 ≪Q: どうして先にASEANと締結しないのですか? A: ASEAN憲章第6条によると、新規メンバーの加盟にはASEAN加盟各国全会一致の合意が必要であり、1カ国でも反対すれば加盟することができません。 わが国の置かれた国際現実から見て、それはきわめて困難なことです。 目下、政府は中国大陸と経済協議の締結を推進する一方で、主要貿易パートナーとFTAの締結を積極的に推進しています。 双方同時に進めることによって、わが国の全体的な対外貿易競争における環境を改善することができます。 中国大陸のほか、ASEAN等の国および地区もわが国が同時に努力する対象となっています。≫ そもそも 「台湾政府が独立を本気で語れば宣戦布告するぞ」 と威嚇する中国だ。 台湾がASEAN諸国に働きかけても、片っ端から潰しにかかるのが中国だろうし、カンボジアとビルマは確実に中国側を向く。 それでもなお、台湾が属するべき国際枠組みは先ず何をおいてもASEANだ、と理想を語り続けなければ、まして難しい 「台湾独立」 はさらに遠のいてしまう。 台湾側が歯を食いしばってASEAN加盟の理想を掲げ続けることで、世の中が台湾を見る目を少しずつ変えさせ、中国側から見た交渉のハードルを高く維持することができるはずだ。 * 7月1日の『自由時報』 (民進党系) の社説 を読んだ。 思うに任せぬ現実を前に、風刺が炸裂していた。 タイトルからして ≪台湾を買いたい共産党、台湾をタダで呉れてやりたい国民党≫ と来た。 ≪国・共の両党の政府が中国重慶でECFAに調印しようというその日に、台湾国防省の前次官である林中斌氏があるシンポジウムでこんなことを語った。 「馬英九政権になってから中国・台湾の両岸情勢の緊張が緩み、北京側は 『台湾を得るには、攻撃するよりもカネで買うほうが安くつく』 と考えるようになった。 『戦わずして東アジアの盟主となる』というのが北京の新戦略だ。 北京は台湾に対して今後も 「気前の良さと善意」 を振りまき続けて、台湾の人心を勝ち取ろうとし、各方面の力を動員して中国・台湾の軍事上の不信をなくし、米国へ圧力をかけて台湾への武器輸出を停止させようとするだろう。」≫ ≪我々 (=自由時報) が思うに、ずる賢く立ち回る中国の戦術を、一般のマトモな国の論理で測ってはならない。 「気前の良さと善意」 を振りまくといっても、実のところは気前がいいわけではなく、全ては中国の役に立つことを絶対条件として組み立てられている。 「台湾を買う」 ほうが 「台湾を撃つ」 より安くつく、だけでは満足しないのだ。中国は、「台湾を買う」 値段も徹底的に値切る気だ。≫ ≪中国の歴代のリーダーは、毛沢東しかり、江沢民しかり、台湾海峡を眺めて嘆くのみ。胡錦濤に至っては文治も武功も一流人ではないから、台湾には手出しのしようもない。 ところが問題は台湾側の 「内部から外部へ呼応する」 馬英九の誤った政策にある。 台湾をさらに安く 「買い叩く」 歴史的なチャンスを中国に与えたばかりに、いまや台湾は本来の売り値の最低レベルすら確保できない始末だ。 そんなわけで、胡錦濤は 「台湾を買う」 必要さえなくなったし、馬英九の能力では 「台湾を売る」 ことすらできず、まさに本紙が過去に予言していたとおり 「台湾をのし付きで呉れてやる」 状態になってしまった。≫ ≪ECFA締結後の台湾は、ふたつに分裂してしまうだろう。 中国から利益を得るビジネス界・財界と、中国から利益を得られないか得ることが難しいその他の人々の、ふたつの階級に。≫ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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