カテゴリ:美術館・画廊メモ
銀座一丁目の Gallery Q で、星山耕太郎さん (昭和54年生まれ) の 「誘惑」 という日本画を買った。
象徴性が高い。タロットカードの逸品の原画にできそうな24枚シリーズ中の1枚。 どんな絵だったかは後でご紹介するとして、今回の個展 「顔の中へ」 のメイン作品 「自画像」 を見ていただこう。 「自画像」 人物写実の腕の確かさ。色遣いは渦を巻くように大胆に変化するが、あれこれ盛り込み過ぎた感じはなく、適度なメリハリ。いいセンスだ。 これが DM 葉書に使われていて、何としても実物を見なくてはと思っていたら、気がついたら金曜夜だ。 金曜夕は、夜8時まで開館する美術館に行くのが恒例なのだが、やはりこの個展を見ねばと思って Gallery Q へ行った。 星山さんは、あごひげをたくわえ にこやかな好青年で、ぼくが画廊に入ると控えのスペースからさっと出てきてくれた。 「人物たちを色の渦が巻いていますね。曼荼羅(まんだら)でしょうか」 と聞いたところ、 「30歳になって、三十而立 (三十にして立つ) を思いまして、これまでお世話になった人たちのことをひとりひとり思い出しながら描いてみようと。それが自分にとっての自画像なのではないか。そんな思いで描きました。 渦の出発点にいる子供は、3歳のときの自分です。自画像と言いながら、絵のなかにいる自分は3歳の子供で、あとは親や近所の人や、何かごとで手伝ってくれた人たちです。もう2度と同じものは描けないと思います」 と星山さんは言う。 「40歳になったとき、同じく自画像をお描きになったら、どんな絵になるか楽しみですね」 と応えた。 * ぼくが買った 「誘惑」 は、下の写真の右側に並ぶ12枚のうちの1枚だ。 それぞれ、緻密に描かれた道具立てを読まないと良さが分からない。 この写真からはそれが読み取れないので、ぼくが買ったのがどの絵かは言わずにおこう。 絵には、あえぐように天をあおぐ、ひとりの人がいる。 その下にぶらさがるように連なる過去のひとびと。 天をあおぐ人を見下ろすように支那の仙人と哲人がいて、仙人は赤い液を満たした小さな玻璃瓶を手にしている。 その赤い液を飲んで過去を離脱すれば、ひとはラクになる。しかしじつは赤い液は毒。 毒にたよることなく、自分の来歴に向き合うしかないのだと、星山さんが自問自答しつつ一気に描いた。 * タロットカードの逸品のような24枚は、それぞれにメッセージが隠されていて、それを連鎖させて読むとさらにおもしろい。 絵と絵は共鳴する。 星山さんにとって初個展だそうで、「誘惑」らの24連作は1枚18,900円という破格のお値段がつけられていた。 「これは、どう見ても6万円以上の品です」 と思わず言ってしまった。この段階で、勝負あったという感じだ。 ぼくは絵の買い方がきわめてミーハーで、だいたい若い女性作家の絵ばかり買っているのだけど、星山さんの描いた仙人がもつ赤い毒薬瓶は手元に置かないと後悔しそうな気がした。 まっさらの心で向き合えば、24連作から連鎖ストーリーを作れそうな3~4作をまとめて買いたいところだ。 しかし、このところ絵を買いすぎているので、今回は 「誘惑」 の1枚のみ。ごめんなさい。 ぼくが絵を買ったことで、星山さんはたいへん喜んでくださった。 このかたは、これからぐんぐん伸びるひとだ。 24連作も、詩人とタイアップしそれぞれの絵に詩をつけて詩画集として出版したらすばらしい。 あるいはカードのセットとして売り出しても。 そんなことまで思いを巡らせてしまう、楽しみな作家さんである。 星山耕太郎展 「顔の中へ」@ Gallery Q (銀座一丁目14-12) は、10月23日 (土) 午後5時まで。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Oct 23, 2010 12:39:42 AM
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