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Nov 3, 2010
カテゴリ：美術館・画廊メモ
Tokyo Designers Week 2010 に行った。20代、30代の人たちが真摯で生き生きしていて楽しそうで、いい雰囲気だった。
目当ては高橋コレクションを中心とする 「ジャラパゴス展」 だった。 高橋龍太郎さんの提唱した 「ネオテニー neoteny ＝ 幼形成熟」 という標語よりも 「ジャラパゴス Jalapagos」 のほうが説明不要で分かりやすいだろう。 「ジャラパゴス」 の由来を語る、ミヅマアートギャラリーの三潴末雄さんのことばを転記しておこう。そこに座標軸が見えるからだ。 ≪産業界ではガラパゴス化と呼ばれる “残念なニッポン” を象徴する現象が起きている。 技術やサービスなどが日本市場で独自の進化を遂げて “世界標準” からかけ離れてしまう現象である。 技術的には世界の最先端をいきながら諸外国ではまったく普及していない日本の携帯電話。 日本独特の要求にもとづいた独自の進化を遂げている間に、世界では別のニーズで世界仕様が決まり乗り遅れてしまった。 しかしながら絵文字などは江戸時代の判じ絵をルーツに作成された日本の独創性であり貴重な表現方法である。 一方、日本の現代アートは世界的な潮流である欧米の現代アートとは異質な美をまとい90年代から登場してきた。 これはこの国際化時代にもドメスティックな美意識と価値体系を一部に温存し続けてきた日本人の国民性からきている。 このように独特の美学、美的センスを日本人が持ち続けた結果、このこだわりが逆に幸いして、“世界標準” （技術の世界と違って明確な基準があるわけではないが） というものさしでは計ることのできない、独自の超感度の美的世界を日本の現代アートは創造した。 漫画、アニメ、浮世絵に影響を受けたスーパーフラット的アート、縄文時代から江戸期の鎖国時代までに発酵されたバサラ美学など、フラジャイルに変態し続ける JAPAN ART を総称して、“ジャラパゴス” （JALAPAGOS） と名づけた （JAPAN と GALAPAGOS を合わせた造語）。 その DNA は美術界のみならず、様々なジャンルに越境して影響を与えている。 見立て、借景、間、傾きなど日本の独自の表現方法は、現代アートからデザイン、建築、ファッションまで幅広く応用されている。≫ ＊ さて、ジャラパゴス展を見て印象深かった作品を何点か。 指江昌克（さしえ・まさかつ）さんの 「MOON」 ： あぁ、これはスターウォーズの惑星形宇宙基地だね。 飲み屋や風俗店、場末の映画館などが凝り集まって、焼け跡地のような番外地に巨大な球体となって浮かんでるんだよ。 球体 “基地” の表面を飾る前時代なる店々のファサードや看板が、丹念に描きこまれている。 異星人の目で見る いとおしさ。 熊澤未来子（くまざわ・みきこ）さんの 「恐慌」 ： 緻密かつ大胆に構成されたパワフルな鉛筆画。パンティだけの妊婦がぎょひゃ～っと池袋あたりを滑走する。素足に縄でローラー靴をゆわえてね。 浮遊する赤ん坊。 魚眼レンズ像のような池袋と、鳥瞰した日比谷公園一帯が、それぞれ丹念に描かれながら、じつは視点も時空も10センチごとに変容を重ねている。 絵画の醍醐味だね。 会田 誠さんの 「灰色の山」 ： ぼくの大好きな 「ジューサーミキサー」 は全裸の美少女であふれていたけど、こんどはノッペラボウの背広姿のサラリーマンたちがてっぺんが見えないくらいうず高く野積みされているんだ。 こちらは、公設の美術館に置けるね。 鴻池朋子さんの 「Landmark ― 再びそこへ戻るための」 ： オブジェの表面に鏡の破片を貼り付けて、光を当てて反射光が部屋一面に発散するパワーを感じるアート。 これまで鴻池さんの鏡片反射オブジェは、上野の森美術館とオペラシティギャラリーで楽しませてもらったけど、今回のオブジェは頭部だけ骸骨の妊婦ヌードで凄みあり。 そのほか、うれしい再会作品のなかには、同じく鴻池朋子さんの髑髏と鹿の襖絵 「Lunar Breath （月の呼吸）」、 池田 学（まなぶ）さんの巨大細密画 「興亡史」 など。 いまというときに生まれておいてよかった！ と思わせてくれる作品群だ。 お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
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