カテゴリ:科学技術に驚く
特許には関心があるほうで、拙著 『中国人に会う前に読もう』 でも66~77ページに 「特許件数が物語る <国の底力> 」 と題して、米国特許商標局に登録された中国の特許件数が平成15年にわずか424件だったこと (ちなみに日本は37,250件) などを書いている。
最近読んだ本のなかでは 「知財戦記」 とでもいうべき 『インビジブル・エッジ』 (文藝春秋・刊) と 警世の書 『「科学技術大国」 中国の真実』 (講談社現代新書) が興味深かった。いずれも特許を正面から扱った本だ。 ところが、そもそも 「特許」 って何なのか、じつは何も知らなかったということに、この新刊書を読んで気付かされた: 泉 通博(みちひろ)・吉田武弘 著 『研究開発プロフェッショナルのための発明バイブル』 (社団法人発明協会・刊、2,000円+税)。 書名がえらく専門家限定を前面に打ち出しているのだけど、むしろ文系のひと向きの本ではないか。数式や化学式など1行もなく、すいすい通読できた。 メーカーの経営陣や、産業記事を書く記者など、特許とは何か知っておいたほうがいい人がじつは沢山いるはずだ。 番組の内容に合わせて料理や花の香りなどをふりまくテレビ!? 昔からある冗談アイディアで、まじめに発明・製造に取り組んだひとがいるかどうか知らないが、たとえばこれをほんとに発明したとしたら特許申請はどんな切り口で行うべきか、といった親しみやすい例で読者を引き込む。 Aという発明が特許をとったら、その技術を使って科学実験を行うこともできなくなるのだろうか? (答: 特許が成立した技術を盗用して製品をつくるのは違法だが、その技術で科学実験を行うのは合法。さもないと、特許が科学の進歩を妨げてしまう。) 発明を、特許出願前に学会で発表してしまったら、特許は取れるか? (答: 発表をしてしまったばかりに、出願時点に 「公知」 の技術になってしまい新規性がなくなったので、苦心の発明でも特許は認められない。) 新しい手術の方法を開発したら、特許は取れるか? (答: 特許があるばかりに、必要な治療ができず人命が失われるといったことがないよう、医療行為に関する発明は特許権が認められない。) 特許という 「制度」 もまた、人間の知恵の結晶であることを知らされた。 人間ってのがどういう行動をしがちかを見据えつつ、どういう制度設計にすれば科学技術の進歩に役立つか考えた結論が、特許制度には反映されている。 そう思ってみると、特許の中身は理系の牙城でも、特許制度のつくりは極めて文系の世界である。 * 著者の泉 通博氏は、ぼくの弟です。 大学卒業後キヤノンで働いていましたが、おととし突然、特許事務所に転職したという知らせをもらってびっくりしたのが昨日のことのよう。今年ぶじに辨理士資格も取りました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jan 4, 2011 08:52:31 PM
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