「仰げば尊し」。歌の題名だけで、高校生の女声合唱の清らな声が脳裡に響く。
じつは日本の古典文法の教育にもたいへん重宝する歌詞である。 「今こそ別れめ 、いざさらば」 というのは 「今こそ分かれ目 、いざさらば」 じゃないんだよ、と教えるだけで、助動詞の 「む」 の已然形 「め」 が学習できてしまう。係り結びの典型的学習教材。 念のためもう少し解説しておくと、 「いま別れむ 」 (=いまお別れしよう) の 「いま」 に強調の 「こそ」 をつけたので、終止形の 「別れむ」 が係り結びで已然形の 「別れめ」 になった。 「いまこそ 別れめ 」 (=いまこそお別れしよう) そしてもちろん、日教組が嫌う歌である。だから卒業式からだんだん消えている。 1月24日の共同通信配信のニュースによると、桜井雅人さんの研究の結果、原曲は米国で明治4年に出版された音楽教材に "Song for the Close of School" (=学校終業歌) として楽譜が載っていることが分かったという。 明治時代の最先端の歌だったわけだ。 いまや米国でも知られておらず長年、作者不詳の謎の曲とされていたという。歴史というのは巨視から微視まで、お宝の謎だらけだ。 さぁ、日教組的にいえば 「チッ、天皇制の抑圧を象徴する歌だと言ってきたのに、米国の歌かよ。 ……いや、米国の歌もいかん! 帝国主義の歌であることに変わりはない。 ……中国や朝鮮の歌だったら、批判しづらいな。いや、そのときは、もとの中国語や朝鮮語の歌詞で歌えばいいんだ。だって、日本語の 『今こそ分れ目』 は変な歌詞だからな」 みたいな反応になるだろうか。 1月24日 共同通信配信のニュース (配信原文は 「あおげば」 となっているが 「仰げば」 と直した。やはり共同通信的には、「扇げば尊し」 と解釈したかったか?) ≪「仰げば尊し」 原曲の楽譜発見 19世紀米国の歌 卒業式でよく歌われてきた唱歌 「仰げば尊し」 の原曲とみられる米国の歌の楽譜を、一橋大名誉教授 (英語学・英米民謡、歌謡論) の桜井雅人さん (67) が1月24日までに発見した。 研究者の間で長年、作者不詳の謎の曲とされていた。 桜井さんによると、曲名は "Song for the Close of School". 米国で1871年に出版された音楽教材に楽譜が載っていた。直訳すると 「学校教育の終わりのための歌」 で、友人や教室との別れを歌った歌詞という。作詞は T. ブロスナン、作曲は H.N.D. と記されていた。 旋律もフェルマータの位置も 「あおげば尊し」 と全く同じという。桜井さんは約10年前から唱歌などの原曲を研究。何十曲もの旋律を頭に入れ、古い歌集や賛美歌などを調べていたところ、1月上旬に楽譜を見つけた。 桜井さんは 「日本にはたどれる資料がなく、今の米国でも知られていない歌。作詞・作曲者の実像など不明な点も多く、今後解明されればうれしい」 と話している。 2011/01/24 21:37 【共同通信】≫ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jan 31, 2011 08:33:38 AM
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