カテゴリ:美術館・画廊メモ
わたしは司馬遼太郎氏のことを 「歴史読みの歴史知らず」 と思っています。
彼の日本観は、 昭和前期だけは他の時代と切り離された特別のもので、日本人のありさまも昭和前期だけ特別に異なっていたのだから、単純に否定・非難していればそれでよい という、安易なものですね。 わたしは司馬遼太郎氏の思考の根本を信頼していません。 一国民の特性は、司馬氏の言うように簡単に変わるものではない。 国民性の美と醜は状況に応じて見え隠れするだけで、根は変わるものではない。 それにつくづく感じ入ることこそが歴史読みだと、わたしは思っています。 ……と、なぜ突然そんなことを言い出すかといえば、昭和10年代から20年代前半にかけての日本画の最先端を特集した展覧会で深い感銘を受けたからです。 この展覧会を見て、ようやく自分が昭和10年代とつながった思いがした。 「<日本画>の前衛 1938-1949」 ここ1年間ほとんど毎日、ギャラリーや美術館を巡り、浴びるように美術作品を見ていますが、その目で 「日本画の前衛」 展を見るとき、ひとつひとつの作品がまさに日本の現代アートの本流にそのまま通じているのを感じたのです。 昭和10年代の日本の若き藝術家たちのみずみずしい感性は、いまの美大生の感性と何ら変わるところがない。 「日本画の前衛」 展の作品群が、今年の東京藝術大学の卒業・修了展で展示されていたとしても、誰も70年前の作品とは思わないでしょう。 東京・竹橋駅付近の東京国立近代美術館で2月13日まで開催され、その後、広島県立美術館に巡回(2月22日~3月27日)。2月11日(金)は午後8時まで開館です。 * * * 現代中国美術の超絶技巧の世界に触れられる、おすすめの展覧会が東京・飯田橋駅付近の日中友好会館美術館で開かれています。 「中国第11回全国美術展受賞優秀作品による 現 代 中 国 の 美 術 」 展 約5万点の応募作から選りすぐられた500点の入賞作品から、さらに日本の学藝員の目で84点を厳選。日展でいえば特選レベルの、粒ぞろいの作品群です。 幻想画や装飾性の強い作品は少なく、ハイパーリアリズムで現代中国の諸相を切り取ったものが多い。 そういう意味では逆に、日頃は美術にあまり関心のない人も楽しめる展覧会と言えるかもしれません。 ただし、額装が雑だったり、運送がヘタだったか額縁に傷がついたり余白部分が汚れたものなど、日本で起きたら卒倒しそうな作品の粗雑な扱いも散見します。 額縁のあらぬところに作品名を書いた事務用シールがペタッと貼られていたりするのも、日本では考えられないこと。 文化の違い、と言ってしまえばそれまでですが、こういう国には日本の一流作品はまだ貸し出せないなぁ。 展示は2月15日までの前期と、2月17日~3月13日までの後期に分けられ、20点ほどの主要作を残して大部分は展示替えとなります。前期は53点、後期は52点の作品を展示します。 休館日が水曜日となっていますので、ご注意ください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Feb 10, 2011 08:25:44 AM
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