カテゴリ:美術館・画廊メモ
日大藝術学部・武蔵野美大・多摩美大・女子美大・東京造形大の5大学展。楽しみにしてきました。
約4時間かけて全作品を見ました。注目作をご紹介します。 ◆ 村野実穂さん (女子美・修士・立体藝術研究) 「自然と共棲するもの」 完璧なうつくしさの樹木の妖精、キノコの精。 ドール制作の技も絶妙ですが、シュールな変容をデザインする発想力でアートになりました。 ほんとに、かわいいです。 ◆ 平井さくらさん (多摩美・彫刻) 「わかってほしいわけじゃない」 檜の彫刻。すこしだけアニメっぽい顔だちの少女は、見る角度によって鋭くせつなく表情を変える。 あどけないヌード。心の傷が胸の透かし彫りであらわされています。 ◆ 柿沼宏樹さん (武蔵野美・修士・油絵) 「Unmanifested Reality」 山口晃ワールドと同ジャンルで、でも違う惑星に展開する柿沼宏樹ワールド。 1月23日に三越特選会で、動物型戦闘メカの幻想画を見せてもらった。 今回のは山水画に現代文明と猥雑人が棲み付き、それを猿山よろしく観光客が右下隅で眺めているというアイロニーに満ちた絶品。 ◆ 大本幸大さん(おおもと・こうた) (武蔵野美・油絵) 「Pox」 豚のガバドンだ! ……って言ったら、通じますか? 現代文明をつぶして横たわり眠りつづける怪獣ですが。 もろもろの構造物の廃墟を部材として存在する巨大豚が都市を睥睨(へいげい)する。 文明批評だ! ……って言う前に、このインパクトに茫然としていればいいのです。 ◆ 石橋 唯さん (多摩美・油画) 「血の呼び声」 裸の少女の坐る高く白い椅子の根が、直径4.4mのスペースを侵略し、ひたすら赤みを帯びてゆく。 少女の顔の表情がこれ以上ないほどの虚無感。 中核は虚無なのに、それを知らない根は狡猾な侵略をつづける。 ◆ 圓田奈都美さん (多摩美・日本画) 「醒める迄」 和紙の美の多様さ、柿色の美しさ、描線のおもしろさをしみじみ味わえる。 ◆ 高林真莉さん (多摩美・修士・日本画) 「躍」 馬3頭。いちばん下の馬の目が、愛をかきたててくれる。多彩多様な塗りで、見ていて飽きない絵になった。 ◆ 久野真明さん (多摩美・油画) 「a portrait as a battlefield」 題は a portrait だけど、じつは40枚の顔のヘタウマ画。 木製パネルに顔を描いたあと、表面をなぶるように削り、彫り。 この効果は強烈だ。 さまざまな描き方の顔が個々の歴史まで一気に帯びて、いっそう多様なポートレートになった。 ◆ 原 汐莉さん (女子美・修士・洋画) 「あたいのかんおけ」 毒々しさと紙一重のヴィヴィッドな色づかいは、児童雑誌の 「付録もの」 の世界かも。ていねいな仕事です。 ◆ 中尾直貴さん (武蔵野美・修士・油絵) 「夢」 劇中劇ならぬ画中画は、目を見開いたうつくしいヌード。 画中画のこちらの現実はモノクロで、彼女は着衣でまどろむ。 構成もしゃれているし、たしかな写実力に魅せられる。 ◆ 荻野清子さん (多摩美・修士・版画) 「ナイフの夜_H」 塗りあとがゆらぐグレーの地に、光と影・陰の効果を存分に意識したモノクロの油性凸版。ポール・デルヴォーのような静かな別世界。 ◆ 永瀬美緒さん (武蔵野美・修士・油絵) 「陰と影」 ひとつの部屋でさまざまなポーズの同一人物9体の群像。 現実にはありえない構成だが、光と影を意識した確かな写実力が構想を支えている。 ◆ 友成哲郎さん (東京造形大・修士・彫刻) 「セイテモセイテモ」 8体の、鶏と化して走る人、あるいは人と化して走る鶏。煙突のてっぺんのような円環上を永遠に巡るのだ。 ◆ 西原 梓さん (多摩美・油画) 「あの子と逸れた」 アニメ・キャラのような少女だけど、口もとが絵画。 宇宙戦士のいでたちと、渋い色彩のミスマッチがまたおもしろい。 ◆ 砂川啓介さん (多摩美・修士・絵画〔夜間〕) 「coetaneous object」 題して 「同時存在物」。ハイパーリアリズムで描く古びた電気装置と、木の壁の落書きの対比がおもしろい。 ◆ 横山瑛子さん (女子美・洋画) 「冬、照らす」 にぎやかな着色を、日本画を思わせる灰色のベールで覆って。 もので あふれる おとむらい。 ◆ 日高進太郎さん (多摩美・修士・版画) 「パチンコ屋I,II」 「母豚舎」 くちゅくちゅ、カクカクとしたエッチング作品。日高ワールド。 ◆ 石川真衣さん (多摩美・版画) 「少女絵巻 上・下」 やや少女マンガふうですが、ファンタジーを紡いだリトグラフ。 ◆ 石井知栄さん (多摩美・版画) 「月光菩薩」 「日光菩薩」 菩薩さまが女性ヌードに。タイの寺院になら、そのまま飾れるかも。 ◆ 神長希予さん (多摩美・版画) 「真夜中の物語I,II」 蔵書票を思わせる端正な構図です。 ◆ 山田哲也さん (東京造形大・修士・彫刻) 「Skull Chair」 巨大な骸骨を逆さにして肘掛ソファにしてしまった。これはそのまま商品化できるね。 ディズニーランドの海賊アトラクションの待合室に置こうかな。 ◆ 伊藤彩恵子さん (武蔵野美・油絵) 「ことのは」 「composition」 かわいいエッチング作品の本。版画オリジナルを楽しめる小ぶりな書籍は、きっと需要があることでしょう。 ◆ 恵 竜矢さん (武蔵野美・油絵) 「18:47」 街燈の下のハイパーリアリズム。これまた光と影・陰の魅力。 ◆ 坂本紀恵さん (多摩美・修士・油画) 「彼は何ももっていないことに気付いた、それで彼は仮面を作り続けた」 ほとんど廃材をつかった無手勝流のインスタレーション。 ところが、板にしゅらしゅら描かれた人間が悲哀に満ちていて、けっこう忘れがたいものを残す。 ◆ 大友直子さん (女子美・絵画) 「人喰い」 「そこまでやるか」 賞、かな。 「耳のバルサミコ風、レモン添え」 「脳の蒸し焼き」 「軽く塩をした女性外陰部のロースト」 「甘い乳房のトルト」 など11連作を一堂に。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Feb 27, 2011 09:46:09 PM
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