テーマ:政治について(20220)
カテゴリ:日本の政治
【3月18日朝の配信コラム】
日本銀行に引き取らせる形で、10兆円を超す 「震災復興国債」 を緊急発行する方針を政府が固めた、と産経新聞が1面の第2ニュースとして報じている。 (日本経済新聞は報じていない。) 日銀引き受けの復興国債。その形で国債を発行するのであれば、わたしは強く支持する。 思い切り平たく言えば、日銀が木の葉のお札を刷りまくり政府にぽんと渡し、政府が震災復興のために札束を配りまくって人々に働いてもらうということ。 じつはこれに相当することを長らくやってきたのが中国である。 共産党の指示で政府系銀行から政府推進事業に巨額の融資をさせ、焦げつきは政府が面倒を見るという形で、社会インフラを急速に整備した。 ■ 安全弁を外して、緊急の実需に対応 ■ これを平時に行うと、実体経済以上に通貨を注入することになるから、遅かれ早かれインフレになる。現在の中国をご覧になれば、わかる。 だから平時の日本ではこのやり方は原則として禁止されている。 通常の新たな国債を、日銀は引き受けない。あくまで、広く市場に買い取ってもらう。 この規律が歯止めをもたらす。市場の判断という安全弁で、政府事業への無規律な資金注入に歯止めをかけている。 しかし今回の震災復興は、年度末に予算消化で道路を掘り返すのとは全くわけが違う。 絶対的に必要な緊急の実需だから、日銀引き受けの復興国債という通常の禁じ手を使うことを強く支持したい。 ■ 通常の国債の増発には反対だが ■ 3月12日のブログ に、こう書いた。 ≪あるいは、日銀券とは別の政府紙幣を発行することで乗り切るのも1つの考え方だ。 総額・使用目的をはっきりさせれば、納得性はあるはずだ。 政府紙幣発行によって通貨量が増えて、最終的には若干のインフレによって吸収される、はずである。≫ 政府紙幣の発行は、日銀引き受けの国債発行と効果はほぼ同じである。 ≪とにかく、国債の増発には反対だ。 未来がうるおう投資なら、国債で資金をまかなって将来世代に負担ねがうのが正解だ。 しかし、きょうの傷を治す作業と資金は、きょうの人々が負担しなければならない。≫ ここで反対したのは、通常の国債を新たに市場へ大量流通させることを指す。 ■ 政府はどう検討したか ■ 通常の国債の大量発行は、政府も今回一応検討したが行わないことにした。 産経3月18日の記事によれば、 ≪新規国債発行も検討されたが、国債を市場に大量流通させれば財政事情が悪化する上、国債の格付けが下がり長期金利の上昇をもたらす危険性がある。 このため、震災復興国債を日銀に引き受けさせる案が急浮上。 日銀による国債引き受けは財政法5条で禁止されているが、同条のただし書きに 「特別の事由がある場合において国会の議決を経た金額の範囲内ではこの限りではない」 と規定されており、今回の震災は 「特別な事由」 にあたると判断した。≫ * * * 【3月18日の夜、記す】 その後、ミスター寝返りが記者会見して、日銀引き受けの復興国債発行を否定した。 「俺は聞いてないぞ!」 って人が、何人もいたってことだね。 ≪与謝野経財相、「復興国債」の日銀引き受けに否定的見解 2011/3/18 10:20 与謝野馨経済財政相は18日の閣議後記者会見で、日銀の直接引き受けにより震災復興国債が発行されるとの一部報道について 「そもそも日銀は既発債を市場から拾うことはできるが、国債の直接引き受けは法的にできない」 と指摘した。 そのうえで 「家計も企業も手元流動性は潤沢。言われているような数字の調達に何ら困難もなく、日銀が特別なことをやることはないと断言しても良い」 と語った。 〔日経 QUICK ニュース〕≫ 実際に日銀引き受けの復興国債を発行するまでには時間がかかるから、まずは否定してかわすのが基本動作。 「復興資金として手持ちのドルを日本円に換える需要があるに違いない」 と為替ディーラーらが読んだために円高に振れてしまい、その対策の手を打っているのが与謝野氏の立場だから 「家計も企業も手元流動性は潤沢」 という発言になるわけだけど、ということは通常の国債を大増発する気かね。 復興国債は数十兆円必要のはずだが。 「国債が売れなくなったときはじめて、日銀引き受けを始めればいいでしょ」 というのも ひとつの考え方ではあるが、国家財政の傷が深まり “臨界” に達するまで通常国債を発行しつづける気か。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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