カテゴリ:美術館・画廊メモ
「現代美術の展望 ― 新しい平面の作家たち」 と銘打った現代アート展。たっぷり時間をかけて見た。
公共美術館は 「3月末までお休み」 といったところが少なくない。 VOCA展も3月15~18日は臨時休館したが、19日に早くも再開してくれたことを称賛したい。 わたしが審査員だったらこの作品に賞をあげたい、と思ったのは ―― ◆ 花澤武夫さん 「Otherness Blue」 東西の融合。う~む、こう来たか! 絵の8割を占めるのは、背景としての青いイスラム紋様のタイルの壁 手前には、キセルをくわえたり槍を肩にかけて坐り込んだりの青蛙たち。 油画だが、ぼかしや にじみ、紅をさしたような混色など、日本画の楽しさもたっぷりだ。 ◆ 阿部岳史 「day dream #1」 「day dream #2」 ストイック。ダンディ。 黒い背景に、木片のさいころを規則正しく並べてある。 それぞれのさいころの表面は、単一の色で彩色してある。 近づくと色見本が並んでいるようなもので、それはそれでまたきれいだが、離れてみれば人物像が浮かび上がる。 さいころどうしは、けっこうな間隔があけてある。おそらく、これ以上間隔をあけると像を結ばなくなるかもしれないギリギリのところで。 ◆ 上田暁子(あきこ)「あふれて入口、あふれて出口」 「とある熱を通り抜ける」 ヌードも電車もないけれど、ぼくの好きなポール・デルヴォーを感じてしまった。 絵がコンコンと脳のドアをノックして、ストーリーを紡ごうよぉと誘う。 暗い紺色や焦げ茶が基調をつくっているが、光はあくまで鮮明な白で、闇に囲まれたなかで色あざやかなモノたちが自分の存在を存分に主張する。 ◆ 片山高志(たかし) 「on the road」 安全用の赤いカラーコーンをかぶった警備員たち…。いや、かぶってるんじゃないよ。頭がカラーコーンになってるんだよ。 だってね、頭が入れ歯になっちゃった老人が2人、頭がテレビモニターになっちゃった若い人が9人、それから…。 交差点は今や、はちゃめちゃに楽しい困った出来事でいっぱいさ。 ◆ 熊野 海(うみ) 「Emission Nebula」 中央では、コンクリートのような質感のキノコ雲が上空で濃厚な薔薇色に破裂するが、そんなことに頓着していられるかいとばかりに、さまざまな日常の大饗宴はつづく。 ◆ 小池真奈美 「あたま山」 落語を絵にしちゃいました。小池さん自身が登場人物になりきってコスプレした画像をベースにした作品。 江戸の桜の下の17人の町人衆が、さまざまな姿態で笑わせてくれる。 輪郭線が一見ぼんやりしていて、いかにもネガを超拡大した写真のような風合い。 筆を使うのでなく、小さく切ったスポンジに油絵具をつけて一捺(ひとお)し一捺しして描いたかららしい。 * VOCA 展の図録の作りもいい。 作家1人に見開き2ページを使っていて大画面だ。自宅であらためて見ても作品がたっぷり味わえる。 36人の作家それぞれを推薦したキュレーター36人が、思い入れをこめた解説を競っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Mar 21, 2011 11:58:33 PM
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